キャンプ開幕まであと一ヶ月を切りました。
選手達の自主トレの様子も伝わってきて期待が高まります。
よく目にするのが「○○が△△に弟子入り」という見出し。
若手は尊敬するベテラン選手と一緒にトレーニングすることで学ぶことも多いと思います。
キャンプまでの時間を精一杯活用してしっかり準備してほしいですね。
でも、他の選手のすることをそのまま真似しても同じ成果は上がりません。
自分流にアレンジする必要があります。
そこで今日のテーマはアレンジ=編曲です。
今年はワーグナー(Richard Wagner)の生誕200年ですから彼の曲を取り上げましょう。
まずはこちらをお聴き下さい。
ワーグナーのオペラ「タンホイザー」(Tannhäuser)の序曲、演奏はショルティ(Sir Georg Solti)指揮、シカゴ交響楽団(The Chicago Symphony Orchestra)。
これをリストがピアノ用に編曲したのがこちらです。↓
演奏はユリアンナ・アヴデーエヴァ(Yulianna Avdeeva)。2010年ショパンコンクール優勝のピアニストです。
私は彼女のショパンコンクールの時の演奏には正直言ってあまり心を動かされなかったのですが、この演奏は本当に素晴らしいと思います。
リストはオペラや交響曲を数多くピアノ独奏用に編曲していますが、彼の作品の中で編曲物はあまり高く評価されていないのが実情です。
でも、私はリストの編曲の数々は素晴らしいと思うんです。
だって、オーケストラであれだけの人数の人間が集まって作り上げる音楽を、ピアニスト一人で演奏するんですから。
リストの時代は演奏を録音することが出来ませんでしたから、交響曲やオペラを家庭で気軽に楽しむことは出来ませんでした。
ですから、リストの編曲物は人々に交響曲やオペラを紹介する大切な手段でもあったわけです。
それに、リストがわざわざ編曲をするのは、リストが原作を気に入ったからなので、「あのリストが評価した作品」と原作の価値も高まります。
リストはワーグナーの作品をいくつもピアノ用に編曲しています。
それだけワーグナーを評価していた・・・だけではない事情もあるんですよ。
えっとですね、ワーグナーはリストと2つしか違わないのに(リストは1811年生まれ、ワーグナーは1813年生まれ)リストの娘婿なのです。
リストと愛人マリー・ダグー伯爵夫人(こう書くとおわかりですね。彼女は人妻、つまりリストとは不倫)の間に生まれた娘コジマはピアニストのハンス・フォン・ビューローと結婚し、2児の母となります。
ところが、フォン・ビューロー夫人コジマとワーグナーとの間に子供が出来るんですよっ!
ワーグナーもこの時点で離婚してなかったのでダブル不倫です。
おまけに、フォン・ビューローにしろワーグナーにしろ,父リスト経由で知り合った男性。
ほんまにもう~、どないなってるねん! なドロドロした人間関係が展開され、やがてコジマはワーグナー夫人となります。
自分も華やかな女性遍歴を持つリストは娘を叱るわけにも行かず(大体コジマは不倫相手に産ませた子ですし)、愛娘のために、娘婿の作った曲をピアノ用に編曲して「ワーグナーがこんなオペラ作ったんですよ。どうです?いい曲でしょう?」と演奏し、宣伝するわけです。
いやあ、美しき父の愛!!
あれ? 自主トレがらみで書き始めたのに、結局リストは広報さんやというオチでした。
次回もリストの編曲物をお届けします。
タンホイザー序曲のピアノ版のCDが欲しいと思われる方にはホルへ・ボレット(Jorge Bolet)の演奏をお薦めします。
ホルへ・ボレット 愛の夢&ラ・カンパネラ~リスト名演集
レーベル: BMG JAPAN
ASIN: B000V2RWL2
EAN: 4988017653456
タンホイザー
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