勢い余って虎バカ本を出してしまう人は少なくない。だからこそ当コラムもネタに困らないわけだし、そもそもこの「虎バカマガジンWEB」編集長・鳴尾浜トラオ氏も2008年に『虎暮らし』なる本を出している。が、それはあくまでも出版社が企画を通したから世に出たものだ。というか、企画を通したのは就活時に阪神電鉄に履歴書と一緒に「タイガース改革案」を提出した虎バカ編集長で、現場で編集を担当したのは私なわけだが、とりあえず出版費用は会社持ちで、トラオ氏には相応の印税が支払われている。
然るに一方、今回ご紹介する本は、おそらく著者自身が出版費用を出している、いわゆる自費出版というやつだ。お金を払ってでも阪神タイガースについて語りたい! その衝動だけで作られたような本。虎バカ本としては一級の物件である。
松沢俊之『トラポエム』(文芸社)。タイトルからして一瞬、耳を疑う。何かの冗談かと思いきや、副題が「阪神タイガースの選手に捧げる詩の世界」というから、そのまんまの意味なんだろう。
著者は〈はじめに(トラポエムの説明)〉で、次のように語る。
〈このトラポエムは、妄信的阪神ファン詩人である筆者が作った阪神の現役&OB選手に捧げる詩の世界である。/昨年の優勝を機に、さまざまな阪神本が出版されたが、その多くがブームに乗ったカタログ本ばかりであり、私の心を打つものはなかった。ならば自分自身で“阪神という名の記憶”を形にしようと思い詩を書き始めた。その結果、過剰なる愛と妄想に満ちた詩が次々に誕生した〉
昨年というのは2003年のことだが、満足できる阪神本がないから自分で作っちゃえというあたり、まさに虎バカの真骨頂。で、肝心のポエムとは、どんなものなのか? 最初に作ったという「井川慶」はこんな感じだ。
2003年のある夏の日 首位を独走している プロ野球チームの大エースは 伸ばしっぱなしの髪の毛を切りに 行きつけの床屋に行った ところが 休み明けの店は超満員 エースは店に入ることはなく 淋しく帰途についたという エースの名は井川慶 誰よりも純粋で 誰よりも純朴で 誰よりも純真な男 口がさけても 俺は大物なんやから先に切らせろや なんてことはいいません (中略) 君は 21世紀の宮沢賢治だ 僕は君と一緒に 銀河鉄道に乗りたい
……すみません、ポエムってこういうものでしたっけ? まあ、芸術とは自由な魂の発露であるからして、そういう意味ではこれも立派な詩なのかもしれない。井川を宮沢賢治に喩えるセンスも常人とは違う何かを感じさせる(純粋とか純朴とかいう以前に、井川が関西弁ですごむわけないんだけど)。
そして、2番目に作ったポエムが、なぜかいきなり「佐野仙好」だ。
我こそは 初代勝利打点王なり! でも いまや 勝利打点なんていう言葉は 完全に死語になってしまった でも、そんなことは関係ない 神様が あなたに与えた2つのもの それは 頭からフェンスに激突しても へこたれない丈夫な命 そして初代勝利打点王の称号 (中略) 藤田太陽が巨人の誘いを蹴って 阪神に入団したのは スカウトである あなたの誠意に打たれたから そう彼は言っていた (後略)
まあ、確かに勝利打点ってあんまりインパクトないけど、〈完全に死語〉って……。あと、〈丈夫な体〉でなく〈丈夫な命〉というところがポエムっぽい気がしなくもない。
この調子で36人の選手&OBについて綴っていくわけである。できれば全部紹介したいがそうもいかないので、冒頭の部分だけ何人分か書き出してみよう。
喜色満面 天真爛漫 いつも心に北川敏博! 2004年4月7日水曜日午後8時50分 春らんまんの横浜が 地獄絵図と化した 仏のゴロー それがお前のあだなさぁ~♪ 鈍足なヤツだったよぉ お前は最後まで~♪ オリックス球団は なぜ中村勝広を GMに指名したのか
……はい、以上でポエム終了。ちなみに2番目のは名前が出てきてないけど、吉野誠に捧げるポエムである。
著者プロフィールによれば、〈現在も随時、執筆しておりホームページで閲覧可能〉とのこと。「トラポエム」で検索してみたら、ちゃんと出てきたので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。
1件 のコメント
なぜだか気になる愛くるしい表情はとりこになる事間違い無し!こちらの商品はプードル(ベージュ)になります。ルブタン 靴 激安 http://davidblair.com/home/modules/shop/20141202230240-e383abe38396e382bfe383b3-e99db4-e6bf80e5ae89-adeu.html