プランと勝負勘の勝利

前回も感じたが広島先発の九里は去年とは別人のように成長していて、切れのよいシュート系を柱に、速い球、遅い球、曲がる球、落ちる球で的を絞らせない投球。1番糸原から左を並べてみたが攻略とまではいかなかった。
尻上がりに調子を上げていく中で、チャンスがないわけではなかった。連続四球で無死一二塁をもらった2回ウラが下位打線で無得点。同じく投手への四球からの連続四球で無死一二塁、さらに投ゴロを九里が弾いて内野安打となり無死満塁とした3回ウラが、糸井の一ゴロを新井がこぼしてバックホームできず、の1点のみ。さらに続いた一死二三塁で福留は三振。追い込まれるまでセカンド菊池は「1点献上やむなし」の定位置だっただけに、悔やまれる打席だった。

そんな九里に8回途中まで熱投させながらも、試合を落とさなかった理由は金本監督のゲームプランにある。翌日休みの日曜に能見を固定させているのは、躊躇なく早めの継投に踏み切れるようにだろう。
能見は初回の一死満塁を鈴木の犠飛による1点に抑えると、3回まで毎回ピンチを背負いながら無失点で切り抜け、4回、5回は三者凡退に抑える。球数75球と、普通であればまだ代え時とは思えないタイミングだったが、5回ウラ先頭で打席を迎えるところで登録したばかりの伊藤隼太を代打に送った。インフルの藤浪に代わって登録された隼太が一二塁間を鋭く破って出塁。できればこれを生還させ、能見に勝ち投手の権利をつけてやりたかったがそれはならなかった。
金本監督は「5回1失点、十分な内容」と、能見の投球を評価した。能見にしてみれば「まだまだ」の思いはあるだろうが、「同点で5回」を作ってくれたおかげで、継投策で後半勝負という金本監督が想定した勝利パターンに入れた。
カープ打線との力関係を冷静に分析し、計画を実行した采配は見事だった。

そのプランの柱にあったのが桑原。鈴木、エルドレッドと長距離砲が並ぶ6回と、一人でも出せば得点機が上位に回る7回を、ピシャリ3人ずつで完璧リリーフ。
能見をサッと引っ込めた意外な采配が大正解となったことで、流れは完全に阪神に来た。

とはいえ九里も本当に素晴らしい投球を見せた。打者の左右を問わず、狙った内角でストライクを取ったり、のけぞらせたり。十分に意識させておいて逃がしたり、つんのめらせたり。

マテオが8回表をゼロで切り抜け、ウラの攻撃はこの日初めて1番で起用された糸原。初回は3球三振で九里を乗せてしまったが、第2打席は無死一塁で落ち着いて見極め、ファウルで粘り、得点に結びつく貴重な四球をもぎとった。第3打席は犠打を決め、役割を果たしていた。
この4打席目、セカンド左、内野安打コースに転がし、闘志あふれるヘッドスライディングで送球よりわずかに早くベースに達したかに見えた。しかし判定は菊池の好守備につられるようにアウト。納得いかない糸原が去りがたそうにしていると、金本監督が肩を怒らせて塁審に詰め寄った。糸原の闘志が監督に火をつけ、打線にも点火した。

一死、髙山が投手の足元を抜くセンター前ヒットで出塁。糸井はフルカウントとして走者を動かすもキャッチャーファウルフライで二死。クリーンナップの当たりが鈍っているのが気になる。
二死一塁で4番福留。バッテリーは執拗に髙山の足を警戒し牽制を多投する。打者への集中を欠き、2ボール1ストライクとボールが先行する。厳戒の中、4球目、チェンジアップを見透かしたように髙山がスタート、會澤からいい送球がいったが二塁は完全にセーフ、会心のスタートだった。
二死二塁、カウントも3-1となり、投手コーチがマウンドに行き、まともにストライクを取りに行かず、5番原口で勝負するように指示を出す。
二死一二塁となって原口。ここまで1四球はあったが、まんまとインサイドを意識させられる投球で攻められていた。この打席もシュートで内角を出し入れされて、ファウル2本でカウント2-2。ここでウィニングショットとして投げたのが外角へのフォーク、完全なボールだったが、真っ直ぐのタイミングであやうく手を出しそうになった。なんとか止まってフルカウント。決め球にバットが止まって、フルカウントになったところで投手優勢から一気に打者優勢になった。それは守備位置の面でも言える。二死一二塁フルカウントとなり、2人の走者は投球と同時にスタートを切れる。バックホームしても間に合わないから、外野は前進守備をやめて定位置に構える。これが勝負の綾となった。
二死一二塁、フルカウント。ここで満塁にしたい投手はいない。6球目のシュートは厳しい内角ではなく、原口のバットのヘッドが走る真ん中よりに。決してよい当たりではなかったが、そこそこのスピードをもったゴロが三遊間を真っ二つに破る。
1本の糸で繋がったような1点は、糸原のヘッドスライディングから始まっていた。

ドリスがフォーク連投でピシャリとセーブし、首位カープに競り勝ち、カード勝ち越し。金本監督のプランと勝負勘がさえた、非常に価値のある勝利だった。


週刊虎バカクラブ
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14 コメント

  1. なかっち
    Posted 2017年4月17日 at 08:07 | Permalink

    あの8回の糸原のヘッドスライディングはタイミングはアウトやと思いましたが、何とかしたいと思う気持ち溢れるプレーやったと思います。あの闘志が監督、ファンのハートを熱くしたと思います。

    藤浪がインフルエンザにかかり、伊藤隼太が昇格。即結果を出したのもGJ!
    藤浪の変わりは誰が投げるのかわかりませんが、出来れば下で結果を残してる横山か福永あたりを上げてほしいですね。
    下から上げると誰かが落ちます。伊藤隼太が今回上がって結果を残すと、江越、新井ら野手にも危機感を与えられます。新しい選手がどんどん出てくる可能性があるので、藤浪の離脱はプラスに捉えています。

  2. Posted 2017年4月17日 at 08:12 | Permalink

    最後は原口が見事に決めてくれましたが、久里のピッチングは敵ながら素晴らしかった。でも緒方監督の勝たせたい親心?が、結果的にタイガースにとって吉となってくれました。勝負事は得てしてそんなケースが多いですが、久里には2回続けてやられてます。どちらの登板も素晴らしい投球でしたが次(GWの三連戦?)はやり返さないとね。

    ともあれ首位カープに勝ち越せたのは良かった。今年はカープアレルギー払拭して、逆にタイガースアレルギーにしてやりましょう!

  3. 虎ジジィ
    Posted 2017年4月17日 at 08:36 | Permalink

    ホント九里には またまたクリしみましたが(汗)、良く接戦を制しましたね。

    原口は粘ってカウントを3-2にしたのが大きかったですね。
    打撃の状態はイマイチだったけど「目の前で福留が歩かされた」これで燃えたのでしょう、意地の一打素晴らしい!
    こういう一打で金本監督も「5番原口は外せない」そんな信頼を得ると思います。

    投手陣も苦しい初回を1失点に抑えた能見、魔の6.7回を抑えた桑原、安定のドレットコンビ みんな良く踏ん張ってくれました。
    これはtoraoさんも仰るように、金本監督の「ゲームプラン」通り。
    ゲーム後の監督インタビューでも今季1番嬉しそうだったのは「絶対に勝ちたいゲームを自分のプランで勝てた」という、監督冥利に尽きる勝利だったからか?!

    影のヒーローは高山!
    8回の勇気ある盗塁が原口の決勝打に繋がったのは間違いありません。
    これからも、じゃんじゃん機動力を使って欲しいです。

    ヒトコト「他球団もカープに勝ってねー」お願い!!

  4. こうさん 
    Posted 2017年4月17日 at 09:03 | Permalink

    金本監督の抗議は動かなかったファーストコーチへの抗議に思えた。「一点勝負だぞ❗」という気持ちがファーストコーチに足らなかったと思う。

    勝った翌日に書くコメントでないけど、思ってしまったから書くしかない。

    「あそこまでしないと今の広島には勝てない」のかな。確かに中継ぎの不安はなかったが昨日の作戦には「常用性」がないし、あってはいけない。広島の監督は「大丈夫。今のウチは、あそこまでされないと負けない。」と思ったのではないだろうか。九里は「僕の責任」とコメントし監督は「結果は全て自分の責任」と通じ合う。この先の九里の5勝、10勝の為の敗戦のように感じた。

    ベンチの能見がカメラに抜かれる度に「投げられるところまで投げて『今日は僕の責任』って言いたいんだろうなぁ」と思ってしまった。せめて6回までは見たかった。そこが能見の責任ラインだと思う。

    あの広島に勝ち越し。けど素直に喜べない。金本監督は「ポイントになる」と言ったが、広島にとっても「ポイントになる」試合だった。九里が一回り成長した試合。成長させてしまった試合。

  5. 西田辺
    Posted 2017年4月17日 at 09:12 | Permalink

    序盤、能見-梅野のバッテリーは外の変化球を中心に広島打線に対峙してた。
    多少のランナーやピンチは覚悟の上で、被害の規模を最小限に抑える投球に
    終始した感じが見受けられます。
    4回からは一転、内角を数多く投げ込み広島を翻弄。
    投球回こそ5イニングでしたが十分にその役割は果たせたと言えるでしょう。
    その後を受けた桑原-マテオ-ドリスも四球1つだけで、ほぼ完璧に相手打線を
    抑え切りました。
    終わってみれば4回以降被安打ゼロ。
    九里の状態も良かっただけに、「これしかない」と言う我慢比べの勝利でした。
    前回の対戦から一番九里に苦しめられた原口が決めたのも嬉しい結果。
    お立ち台の決め台詞じゃないけど、あの打席まさに「必死のパッチ」だった
    のでしょう。
    原口の心中を勝手に想像するに「インコースを打って決めたい」と思ってたんじゃ
    ないですかね。
    相手の最大の武器を粉砕して勝ちをもぎ取る。
    それでこそ勝負師の最大の矜持ではないかと。
    監督は昨日を、現時点で最大のポイントとなる試合と位置付けていたようですね。
    去年散々な目に遭わされ、今年も風下に立たされることになれば、チームにも
    悪影響が出るだろうし、シーズンの目標さえ失いかねない。
    拙攻もあったし、九里を打ち崩したとまではいかなかったけど、勝ちと言う結果
    を得られたのは大きい。
    これで波に乗りたいですね。

    藤浪がインフルエンザとか・・・
    1度ローテを飛ばすくらいで済めばいいのですが、ファームから誰かを上げて
    対処した方が良いですね。
    今の時期に全員の間隔を詰める事に余り利点は感じられません。
    ぼちぼち糸井・福留・鳥谷辺りの休養日を含めて考える時期が来たのかも知れませんね。

    • いわほー さんのアバター いわほー
      Posted 2017年4月17日 at 12:32 | Permalink

      原口はこれで今シーズン2パッチ目。
      目標の10パッチまであと8パッチ。
      目標をクリアした暁には「必死のパッチ」を原口のものと認めてあげよう。

      • 西田辺
        Posted 2017年4月17日 at 13:55 | Permalink

        今更藤浪も使いづらいでしょうね(笑)

  6. トラ11
    Posted 2017年4月17日 at 11:38 | Permalink

    能見は3回までよくぞ1失点で押さえてくれました。4、5回に良くなってきたところで桑原へ。もう1イニングは見たいと思いましたが、金本監督のプラン通りに桑原が素晴らしい仕事。

    マテオ、ドリスも真剣モードで頑張り、他の守備陣も引き締まったプレーで、首位カープとは五分になり、今季シーズンがとても楽しみになってきました。

    糸原のガッツ溢れるプレー、高山の盗塁が勝利を呼び込むきっかけになったことは間違いありません。
    原口の「ヒッシのパッチ」はいっぱい聞きたいです!

  7. hi64
    Posted 2017年4月17日 at 11:41 | Permalink

    一昨年のマエケン,去年の黒田と実績ある先発投手が抜けて,
    先発が苦しいかと思っていたカープですが,また一人手強い先発が出てきた印象です。
    ジョンソンの離脱もあり,ローテに加藤,床田,岡田,九里と実績のない投手が並ぶ,
    一見すれば苦しいローテですが,とにかく長いイニングを投げさせて先発投手を育てようという首脳陣の意図が見える継投となっています。
    強力打撃陣を擁している余裕もあるのでしょうが,ここまでそれぞれ結果を出しています。
    先発を引っ張りすぎとの意見もありますが,とにかく一貫しているポリシーは評価できる。
    ひるがえってタイガースですが,藤浪の離脱で少なくとも1回ローテに穴が開きます。
    噂されている福永の抜擢はあるのか。
    個人的には,福永を先発させ,疲れの出ている糸井,福留,鳥谷を全て休ませて,
    この試合若手にすべてくれてやるという試合があってもいいかなと思っています。

  8. サヨナラ3ラン
    Posted 2017年4月17日 at 11:52 | Permalink

    確かに あと二点は取れてるゲームでしたが
    まぁ勝利への執念は選手も監督も見せて
    くれたのでヨシとします。
    高山の盗塁は行けたら行けの指示だったようだけど
    マークをかいくぐり良く成功させたと思う。
    あの積極性が今後も続くことを願う。
    糸原は年間通して起用できる体力とコンディション
    であれば新人王も狙える素材だと思う。
    桑原に対しては今日が休みとはいえ
    春先から少し登板過多に感じている。
    故障しなければ良いけど。
    使いたくなる気持ちは充分 理解するけど。

  9. レオン
    Posted 2017年4月17日 at 12:53 | Permalink

    8回の糸原の走塁、セーフに見えましたけどね…
    あの場面、気迫のヘッドスライディングも分かりますが、普通に走り抜けた方が
    速い選手もいるので、走り抜けた方が良かったのではと思ってしまいました。
    (糸原はそんなにヘッドスライディング上手ではないですね。平野コーチに教えてもらうと良いかも)
    しかし、あれがセーフなら試合は
    また違う方向に向かってたかも知れませんけどね。
    終わった事は言っても仕方ないので
    勝ったので良しでしょう。
    藤浪のインフルエンザは軽症だと良いのですが…心配です。
    しかし、そこからチャンスを物にする
    選手は誰なのか、それは楽しみですけどね。
    一昔は鬼門と言われたナゴヤドーム。
    最近は苦手意識はないと思います。
    ここ5試合ホームランが無い阪神タイガース。そろそろ見たいですね!
    そう高山俊の成長した1打を!

  10. 虎轍
    Posted 2017年4月17日 at 13:15 | Permalink

    このカープ3連戦に思える事は、阪神の打撃陣がここぞの場面で、点数をもぎ取れてきたような感覚がありますよね。
    前日は1得点だけでしたが、それでも少ないチャンスで1点は取ってます。
    まだ阪神打線は完封をされてませんが、ここぞの場面で畳み掛けたり、キッチリ得点が出来てるのはええ事ですね。
    昨日はチャンスを作ってましたが、九里の気迫のピッチングに抑えられてましたが、原口の必死のパッチ、なんとか打ったるの気持ちが勝ってましたね。
    後ろの鳥谷の調子もええから原口で勝負をしたかったんでしょうが、そこは原口が許さなかった。
    チームとして、全員の調子が良い訳は無いんで、カバーしあって、全体で調子を維持して勝っていければ良いですね。

  11. 黄金バッテリー
    Posted 2017年4月17日 at 20:17 | Permalink

    Toraoさんの文章が秀逸。
    タイガースが勝った試合は特に筆の走りが良いようで。

    今年のタイガース、このまま大きな連敗なく
    後半まで行って、最後に総合力で優勝をつかんでほしいですね。

    現実にはそう簡単に行かないかもしれませんが。
    しかし、着実に層が厚くなっています。

    そのためには若手も投手がもっと出てこないといけませんね。望月、小野、横山、福永
    藤谷。誰でも良いので出てこい!

    それにしても、気になるのが横田選手。

  12. yalkeys
    Posted 2017年4月17日 at 20:58 | Permalink

    旅先でしたが結果を知り、盆と正月が一緒に来たような嬉しさでした。カープの3敗が全てタイガースからと言うのも、驚きですが、他のチームは何しとるんや!と、余裕のボヤキも出て来ます(^O^)

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