暴論「高卒入団禁止」

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NPB2の方でも少し意見交換をしたのだが、そのやりとりをまとめる記事。


高校卒業してすぐのプロ入団を禁止にしては?という乱暴なことを想像してみる。まあまあ、そう言わないで、想像だけだから(笑)。
ちょうど今年の高校野球を盛り上げまくった斉藤投手が早大入りし、田中投手がプロ(イーグルス)入りしたこともあって、ああだこうだ言うには良い機会だと思う。
タイガースでも、また他のどのチームでも、「高卒で獲って来た選手が成長してレギュラーになってくれることほど嬉しいことはない」などと言う。私も言う。この言葉の裏にあるのは、「高卒選手よ、大学出や社会人のキャリア組に負けるな」のような、「逆学歴差別」であったり、「高卒で獲った選手はなかなか思うように成長しない」というようなチームの育成能力への疑問であったりするのかなぁ、とも思う。
よく考えると、高卒のプロ選手に「大卒キャリアに負けるな」などと言うのは根本的におかしな話だ。いろいろあっても一般的には、高卒から入る選手の方が、少なくともその時点ではプロからの評価が高い選手が圧倒的に多いのだから、その野球選手という職業に限って言えば、高卒選手の方がよっぽどのエリート。それなのに一般の営業職や事務職などと同じ感覚で見ちゃうから変な「逆差別」になっちゃう(笑)。むしろ「おい大学出の遅咲き、エリートに負けるなよ」の方が正しい判官贔屓のはずなのに(笑)。
「そもそも論」で始めると、現在の日本には「大学ってダメ」という空気がある。遊んでばっかりのムダな時間で意味がない、社会に出ても役に立たない、社会で学ぶこともできる、入試が難関で卒業は楽々じゃダメ…すべてそのとおりで、大学の改革は必要だと思う。一方、最先端の研究は常に社会から必要とされ続けて、その存在意義は一度も揺るいでいない。落語にたとえて言うと、古典軽視・新作重視という傾向かな。それが現代日本の社会的風潮でもあって、普遍的な価値観が軽視され、新しい価値観にどんどん飛び付いていくというのがある。
おっと話戻して、高卒選手をプロがちゃんと育成できているかについては、なかなか検証が難しいことなのでなんとも言えない。印象としては、プロに早く入ったからと言って、それがプロで有利に働くということないんじゃないかなぁって感じ。一部の高卒数年で頭角を表す選手は、すでに高卒の段階であるレベルに達していて、あとから出てくる選手は、肉体的成長にともなって、プロで活躍できる要件(性格的な適性や、精神面の強さなど)が満たされたものだけで、それ以外は淘汰されているように思う。簡単に言ってしまうと、一般的にプロ球団の育成能力って、ひょっとするとあまり高くないんじゃない?ってこと。
自分で選んだ道で、成功を掴めなかったのは自分の責任。厳しい現実に負けず、次の人生で頑張れ!なんていうのは簡単だけど、高校卒業したばかりの少年をドラフト指名して、「夢の達成」と契約金を与えて、商業主義の現実の中に放り込んで、あとは実力主義の名の下に取捨選択して捨ててしまうのではちょっと酷いと思ってしまうのだ。現実的に、元プロ野球選手が問題を起こしたり、悲惨な人生を歩んだりする記事に出くわすと、悲しい気持ちになる。
だからといって「高卒選手をプロに入れるな」というのは論理飛躍があるけれど、現実NFL(米プロフットボール)では高卒はドラフト対象外。日本でも少子化の中、大学の受け入れ体制はたっぷりあるはずだと思うし、今後日本でも重視されるであろう、トレーニング方法、社会とスポーツ、教育とスポーツなど、たとえば勉強嫌いのアスリートでも、「やっておいて損のない」研究テーマはたくさんある。
選手の育成能力についても、最近の大学卒、社会人出の選手たちの安定感は、プロに負けるものだとは思わない。今後、企業スポーツから変質するかも知れないクラブチームともども、大学チームが「育成受け皿」として活用されるべきだと思う。
問題は「1年でも早くプロに入った方が得」「旬の今売った方が得」のような短絡的(ちょっと乱暴)な価値観なんじゃないかな。もちろんトップ選手にとっては、キャリア記録を目指すとか、いろんな意味で早くデビューしたいというのはわかるので、「一律禁止」とするのは非難されるかもしれないが、そんな選手だっていいとこ40歳そこそこで「現役引退」するのがプロ野球、その後の人生を考えたら、3年4年の社会勉強、専門研究を役立てることも意義深いと思う。またそれがあったからプロでも成功のチャンスが広がることもあるだろう。
「高卒禁止」うんぬんとは関係なく、若いプロ野球選手に社会との接点を持たせるような教育プログラムを徹底することも重要で、ここも他のプロスポーツに比してプロ野球が大きく遅れをとっている部分でもある。

コメント

  1. メル より:

    イチロー、松井、城島、松坂、井川、岩村、と高卒ですよね。早いうちに目標のメジャーに行けるのは、若いから?という気がします。
    あ、今、調べたら田口、井口は大学卒のようですね。
    まぁ、やる気があれば勉学は現役引退してからでも出来るし、私は「プロ野球でやりたい」と本人が思っているなら、早くに就職(入団)したほうがいいと思いますけどね。好きなおかずは先に食べるタイプなので。
    って、しょっぱなから、問題意見(笑)書き込みでしょうか。

  2. コミィ より:

    ファームの試合数が少なすぎるのが問題だと思います。
    ファームでも起用されるチャンスのない選手はいますから。
    試合で使ってみて結果を残していないかぎり、上では使いにくいでしょうから。
    なるべくお金をかけないでたくさんの試合をする動き(今動いてますが)を僕は歓迎してます。

  3. torao より:

    to メルさま
    >しょっぱなから、問題意見(笑)書き込みでしょうか。
    そんなことないですよ、もともと暴論ですから(笑)。「高卒禁止」意外にも、この記事で提示した問題点は解決方法がいろいろあると思いますしね。あ、第二の人生を支援する仕組みについて、書くの忘れた…。
    to コミィさま
    >ファームの試合数が少なすぎるのが問題だと思います。
    ありますね。ファームが「プロ野球選手」の体をなしていないのが問題なのかも。球団にとっては、試合をすればするほど赤字が増えるだけの「お荷物部門」に見えるのかなぁ。だったらなおのこと、社会人やクラブチームに育生を任せる形体を模索したり、今のようにどうしても育生をやりたいというのなら、地域の大学、社会人、クラブチームと試合する機会をもっと増やすことを含め、ちゃんと育生して欲しいです。

  4. あーちゃん より:

    いつもサッカーの話題で恐縮ですけど、Jリーグではやはり「高卒=エリート」「大卒=回り道、遅咲き=非エリート」というイメージは強固にあります。特にJクラブの生え抜きでトップに上った選手のことを、私らは「箱入り息子」と呼んでます(笑)
    でも、現在のサッカー界は、大学と大卒選手をうまく活用していると思います。育成部門に弱点のあるJ2の小さなクラブほど、大卒の選手を多く採用してます。また、Jの監督に必要なコーチライセンスを取るための研修の場として大学を利用する人も多いです。
    翻って、日本の野球界の若年層の育成については、アマチュアとプロの軋轢のしわ寄せが一番大きく出ている部分だと思います。また、アマチュア野球、というか高野連をトップとする少年野球の前近代的な歪みもすさまじい。
    ただひとつだけ言えることは、チームを辞めたり移ったりする権利を含めて、プレイヤーたちが「自分のやりたいところで野球をする権利」というものが早く確立してほしいものだと思います。そう、今の少年野球はそんな自由すらないところが多いのですよ。とんでもない指導者ほど、辞める自由すら与えないの。
    この話をしだすと長くなるので、年が明けて時間ができたら、NPB2の方に書き込みに行きます。……てか、この書きこみ自体が十分長いですね。いつもすみません。

  5. run より:

    大学や社会人の方が試合数は少なそうだし指導者もプロ程充実してないと思うんです。
    授業や仕事で時間もとられるだろうし、プロより練習時間も少ないはず。
    それなのに高校時プロ入りした選手より成長しているイメージがあるのは、
    気持ちの差が大きいのではないでしょうか。
    給料が少なくても外車に乗ってる2軍の選手と、プロ入り目指し頑張っている選手では
    ハングリー精神が違いそうですから。
    大学や社会人出の即戦力の方がチャンスは多くもらえそうだし、社会勉強もできそうだし、
    選手にとっても良い感じがしますが、「高卒入団禁止」だとプロが育成を放棄することに
    なる気がするのですが・・・
    >若いプロ野球選手に社会との接点を持たせるような教育プログラムを徹底することも重要で、
    >ここも他のプロスポーツに比してプロ野球が大きく遅れをとっている部分でもある。
    私は無知なのでなにもわからないんですが、他のプロスポーツは良いシステムがあるんですか?
    良いシステムがあれば真似すればいいのに・・・ってそうしないのがNPBなんですよね(笑)

  6. maruko1192 より:

    ちゃんと調べてる人がいるようです。
    http://gendai.net/?m=view&g=sports&c=040&no=20147
    >結果を残せず引退した選手(投手なら3勝以下、野手なら安打72本以下)の割合は、
    >高卒が73%。それに対し高校あるいは大学を経た社会人出身は51.1%
    だそうです。まあ成熟してから採用したほうがブレが少ないのは当然ですし、いつまでもプロ以外の野球環境の充実が維持されるとも思えないので、プロの育成環境も残すべきでしょうけど。

  7. 蒸し返し より:

    高卒選手の中には(たまに大学・社会人でも)
    今年の田中投手のようなエリート選手以外に
    素質だけのキワモノの選手を入れる枠が
    低いドラフト順位であるような気がします
    (以前ならドラフト外、いわゆる隠し玉)
    そういった選手はその素質が大きいが
    外す可能性はきわめて高いという選手です
    (例えば山本昌や秋山)
    そのような選手をプロ球団が本当に
    育てるプランをもって選んでいるのか
    と考えると大きな疑問が残ります
    又、高いドラフト順位であってもそもそも
    高校生はいずれも素材重視のキワモノと
    考えるとその素質にあった
    育成がなされているのかと心配です

  8. torao より:

    to あーちゃんさま
    >…十分長いですね。いつもすみません。
    なにをおっしゃいます、いつも貴重な情報をありがとうございます。
    >…コーチライセンスを取るための研修の場として大学を利用…
    なるほどなるほど。育生の場だけでなく、セカンドキャリアのためにも活用でき
    るんですね。
    またあっちに書いて下さるのを楽しみ待っております。
    to runさま
    >…気持ちの差が大きいのではないでしょうか。
    私もそう思います。選手にはそれぞれ、プロになるべきタイミングがあるのと思います。ハングリー精神があるからこそプロに早く入って、焦って故障するなんてこともあったりするので、こればかりは結果は神のみぞ知るなんですけど。、
    >…「高卒入団禁止」だとプロが育成を放棄することに…
    まあ極端な例です。ただ、プロは発表して金を稼ぐ場所。育成は大学、社会人でという方向性もあって良いと思います。プロの育成スタッフが大学、社会人で働けるようになれば、なおけっこうだと思います。プロが獲った選手を、大学や社会人に送り込んで勉強させるっていうことだってアリで良いと思います。
    「教育プログラム」については、NPBも2日くらいの新人研修をやり始めましたが、アメリカのプロやJリーグと比べると時間、中身ともかなり見劣りするようです(本の知識だけですみません)。
    to maruko1192さま
    記事にもあるように、いろんな思惑や戦略含みで指名するので数字だけで判断はできませんが、大学、社会人には育成の上手い人がたくさんいるんだなぁと、いつも思います。プロアマの問題さえなければ、もっと面白いことができるんですけどね。
    to 蒸し返しさま
    すみません、コメント内容で変わるような「捨てハンドル」はできればご遠慮下さい(そうでなく、いつもそのHNをお使いならごめんなさい)。
    指名の時点でほぼ出来上がっている選手はほんの一握りで、あとは「順調に育てば」とか、「こういう指導方針にすれば」とか、ファンタジーの部分を多く含んでいるのでしょう。そこでプロの場で育成するのが合っているか、大学・社会人が合っているか、またそれぞれの指導者、指導方針が合っているかによって、結果は違ってしまうんですから、難しいものです。もちろんその判断はそれぞれ尊重すべきですが、選手を大切にするという考え方がもっと大きくなるといいなぁと思います。

  9. 蒸し返し より:

    レス有難うございます
    捨てハンドルではございません(汗
    他のサイトでもこのHNを使っております
    ここに書き込むのも初めてのはずなんですが…
    (記憶違いで違う名前で書込んでいるかも、その時は御免なさい。ドラフトでアソボさんにはこのHNで何回か書込んでいます)
    こういった書き方をされている方がいるのでしょうか?
    野球の話に戻すと有力な選手が今でも行きたいプロ球団に入るために足掛けで大学や社会人を選ぶ場合があってその選手がその足掛け気分のために成長しない場合があります。それだけなら本人の問題で済むのですが、そこにはその大学・社会人野球のアマへの軽視があって、どうもこれが気に入らないのです。大学・社会人は育成の場だけでなくやはり独立した野球だと思っているので、そういった面を見逃したくないなあと思うのです。(実際面白いですよ)

  10. torao より:

    to 蒸し返しさま
    HNの件、大変失礼いたしました。いや、何を蒸し返されるのかなぁとドキドキしてしまいまして、単なる勘違いから来る非礼を重ねてお詫びいたします。
    私も、実はプロばかりしか見ていないので、アマについてあれこれ言えたものではない口です(大学野球を見ていたのは自分が学生だった20年くらい前ですから…)。
    最近始めましたNPB2というサイトともども、アマファンの意見をいただけるととても嬉しいです。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  11. 西田辺 より:

    >選手の育成能力についても、最近の大学卒、社会人出の選手たちの安定感は、プロに負けるものだとは思わない。
    どうも、アマチュア期間の育成能力というものが
    軽視されてる傾向みたいですね。
    アチラにも書きましたが、彼らの中にはプロをも
    凌駕する高い指導能力を持った指導者がゴロゴロ
    います。
    殊、指導レベルという点では世界でもかなり高い位置にいます。
    人間育成という点でも、高校即入団というルートは
    一度考えるべき問題でしょうね。

  12. torao より:

    to 西田辺さま
    プロのコーチは、みなプロ出身者なんですが、指導者もプロ出身でなきゃ能力がないってことはないですよね。コーチがプロアマ自由に行き来できるようになったら、昇格、降格含みで面白いことになりますね。