昔の話を思い出した朝

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この季節、ブログで書くことは基本的に「無計画」。朝、ネットでいろんな記事を読みながら感じたことについて触れるというのがひとつのやり方なのだが、最近は「本当にいいたいのはそんなことじゃないんだよな」という気分になることもある。

だいぶ前になるがアメリカ式のソフトボールをやって遊んでいたリーグで、ちょっとしたいざこざがあった。ベースボール発祥の地には軟式野球というものがないので、気軽に遊ぶ「草野球」はスローピッチソフトボールがその役目を担っている。日本でもその面白さを堪能しようという人たちが集まってリーグを運営していた。

そのリーグでは打席と塁上ではヘルメットの着用が義務づけられていた。日本では軟式野球でもヘルメットの着用は当たり前で、ケガを防ぐためには有効だと考えたからだろう。
当時、私たちのチームはアメリカ人のスポーツクラブに所属する人たちとの交流を持ち、本当の「本場のやり方」を熱心に研究したりしていた。そういう選手をチームに招き、技術や文化を教えてもらっていた。

ある日の試合中、そんな本場のバリバリの選手が、打席でヘルメットを被らないことがきっかけでトラブルになった。
そのリーグはアメリカ式というより、メジャーリーグのコスプレにこだわる「文化」があったので、防具一式も大リーグ風。しかし本場の人たちが楽しむスローピッチはあくまでも楽しく遊ぶことが第一義で、そもそも危険な接触プレーはしない。女性も一緒にプレーするし、Tシャツ短パンのプレーは当たり前、ヘルメットも普通は被らない。多少のリスクはともなうが、それよりも参加しやすいこと、各個人の自由なスタイルが優先される。

本場に学ぶはずのアメリカンスタイルが、「本場の先生」を排除しようとするリーグに反発して、チームはリーグを離脱し、アメリカ軍のレクリエーション施設で行われているリーグに参加することになった。
そのリーグでは、ヘルメットを着用している人はほとんどいない。日本人プレーヤーの中には習慣として、あるいはコスプレとしてヘルメットを被る人もいるが、それによって事故が防げたといったケースは知らない。もともとあれはスピードボールによる事故を防ぐためのものなのだろう。

何でこんな話をしたか……。安全のためにヘルメットを被ろうという考え方はわかる。万に一つ、参加するひとのケガのリスクを少しでも減らすのであれば、被ってほしいと考えたのだろう。しかし、それはほとんど科学的思考ではなかった。本場で何十年、百何十年、何百万試合、何千万試合と楽しまれてきて、まったく問題になっていないことを怖れて、本来の魅力を損ねたり、本場で大切にされてきた自由な楽しみ方を奪ったりすることの愚かさを知った。

本場では、誰もヘルメットを被りたいという自由を奪ったりはしない。しかし日本では「よかれと思って」、自主的に誰かの自由を奪おうとする。その方向に群集心理が働いていく。

今朝はそんな昔の話を思い出した。

コメント

  1. いわほー より:

    toraoさんの紹介がきっかけで始めたスローピッチ。
    こちら大阪を基盤とした「メトロリーグ」で、もっぱら最近では選手としてではなくリーグ運営を軸に携わっています。
    「メトロリーグ」では打者走者はヘルメット装着を義務付けています。
    そもそも装着義務化を提案したのが私でして、当初は反発する方も多くいましたが、いまではすっかり定着しました。
    米国人にとっては面倒だし強制を好まない体質であることは理解できますし、滅多なことが起きないことは事実ですが、打者走者に野手の送球が直撃するリスクは十分あります。
    私から言わせればレクリエーションだからこそ、滅多に起きない事故でリーグ存続を台無しにしないための施策。考え方は色々とは思いますが、これはこれで私は正しいんだと思っています。

    • 鳴尾浜トラオ より:

      メトロにはメトロの文化がありました。たとえが適当ではなかったかもしれませんね。すみません。

  2. 虎ジジィ より:

    私は頭の回転が悪いので今日のコラムの核心を読み取る事ができませんが、
    なんとなく思ったのは、私が毎日通っているスポーツクラブで「マスク必着」になっているのですが、
    ほとんどの人が呼吸のし易いウレタンマスクか、そのジムで販売している網戸の網を少し細かくしたようなマスク(実質効果無し)を着けて運動しています。
    この「マスクしてます」という ほぼカタチだけの行為に何の意味があるのか?に疑問を感じています。
    入館時に検温&消毒を必ずやるので
    「運動時はノーマスクOKにするか、強制するなら不織布&浴室でも着ける等徹底しないと意味がない」
    群集心理に訴える今日のコラムで、ふとそんな事を考えました。
    的外れかな?!

  3. こうさん より:

    虎ジジィ様と同様に俺もコロナの中でのマスク着用と重ねて読んだ。

    政府が初めに配った10万円で国民は「どこまで言うことを聞くのか」を調査されているように感じるほどにマスク着用が当たり前になった。もう誰も外せない。外したら非国民。敵はウィルスなのにマスク着用派と非着用派で対立する。もう「なんだこれ」状態なのに、それが日常になる世の中。

    生きるために店を開けると非国民。政府からは罰を与えられる。北の国を恐ろしいと思うが日本なりの「美意識」は時に恐ろしいほど日本人を魂から揺さぶる。

    どこかの球団が「私たちの敵はウィルスです。さあ、マスクを外して応援しましょう。」とヴィジョンに文字を出す日が来るかもしれない。…来るのかな。何回目のワクチン摂取が終われば、そんな時が来るのかな。

  4. 西田辺 より:

    誰にとって何が安全なのか、何を優先するのかはその集団なりのルールが
    あります。
    先日、関西のリーグで私がホームの突入した際、外野からの返球が後頭部に
    当たる出来事がありました。
    外野からの返球ですし、ヘルメットも着用していたので特に何と言う事は
    なかったのですが、まぁ全くないケースでもありません。
    スローピッチソフトにおいて、ゲームの特性上一番危険に晒されるのは投手
    でしょうね。
    わずか15mほどの距離から打者の強烈な打球、しかも硬式ソフトボールが
    すっ飛んでくるんですから。
    過去には大きな事故が発生している事も事実。
    何を恐れ、何を予防するかは、その時々や競技の種類で変わってきます。
    今の世の中も、過剰な情報や煽り報道で本当に何を恐れるべきかを見失って
    いるような気がします。
    「正しく恐れる」日が一日も早く来ることを祈ります。

    • 鳴尾浜トラオ より:

      件のリーグでも投手の防具はルール化されていますね。
      基本マッチョな美意識を持った人たちで、自由を愛するのですが、軍関係者も多いためかガイドラインは絶対というところもあります。なかなか興味深い文化です。

  5. より:

    「かもしれない」対応はどこまででもやれてしまうのでやりだすと終わりが無いんですよね

    何処で線引きするかについて多くの人が議論し合意しあとは覚悟して運用し問題あればアップデートする、というプロセスでやっていくしかないのですが、こと命に関わる事項ですと「問題あれば」の部分が取返しつかないこともあるので合意が難しい点はあります

    この問題のポイントは「究極的にはやる方が正しい」点で、スポーツの場合は主義主張が違うなら分かれてプレーする選択もありますが、コロナにおける社会運用はそうはいかないので「やる方が正しい」に寄せていくことにならざるを得ないのかなぁと思います。そんな中で虎ジジィ様が仰っている「ほぼカタチだけの行為」は「(なんとなくまたは嫌々)社会に寄せている」人にとっては良い落とし所なのではと思ったりもします

    科学的思考も大事なんですが感覚(感情)的思考も大事で、最終的に人は感覚(感情)で判断するという話もあるので、それをどう巧く使って目的を達成するか、がポイントなんでしょうね(プロ野球の監督にも通じそうな話ですね)

  6. 虎轍 より:

    私たちのしてる草野球ではヘルメットは被ってませんね…
    キャッチャーくらいかな?
    野球好きが集まって月1くらいでしてますが、ヘルメットは気にした事が無かったですね。
    確かに打球が当たる、送球が当たる可能性はありますからね。
    ただ、野球はお金がかかるスポーツなんで、最近は人を集める方が大変なスポーツになってます(泣)
    疫病退散!
    頑張ろう日本!