西武ライオンズ渡辺久信監督の書いた「寛容力?怒らないから選手は伸びる?」を読んだ。
平易で抑制の利いた文体はとても読みやすく、また渡辺監督の人柄が滲み出るようで、読み進めるにしたがって、どんどん渡辺監督のことが好きになっていくのを感じる。
本書は、大成功した優勝監督の体験や考えを通して、指導者が後進を育成する時のヒントにして欲しいという狙いがある。教育、職場、家庭など広く応用できるであろうことを請け合う。「寛容力」の重要性は誰もが感じるところ。でもこの本の説得力はハンパじゃない。
記事にこんなタイトルをつけたからには判定を下す。私は「頑固力」より「寛容力」の方が好きだ。渡辺監督は、今チームに何が必要かをしっかり考え、いつでもその基本方針に立ち帰りながら、本当にブレることなくやるべきことをやっている。その意味では「頑固力」と似ている部分はたくさんある。だが、その基本方針策定の部分で、岡田監督とは「光と陰の分量」がずいぶん違う。「こういうことはしたくない」を積み重ねて行ったような岡田監督の基本方針は、やっぱりどこか陰の部分が多いように思う。
本書は教育書、リーダーの指導書を狙っているのだろうが、それと同等に、いやそれ以上にエンターテインメントだ。体裁を変えれば「ナベちゃんの大冒険」という長編の本にできそうなくらい、ナベちゃんは素晴らしい体験を積み重ねている。それはラッキーも多分にあるかも知れないが、ナベちゃん自身の持っている資質、何でも前向きに積極的にやってみようという、楽観的な明るさのおかげだろう。否定的な側面にとらわれすぎず、それは後学の参考として流して、明るい側面に自分からどんどん近づいていく。受ける刺激に感動しているうちに、ナベちゃんはどんどんどんどん成長していく。いくつか紹介されている台湾行きや台湾でのエピソードはどれも実に痛快な物語だ。
毎週ヒット曲のランキングが発表されているとする。今週の10位は、先週まで10週連続で1位だった曲「A」が急降下して入った。すぐ下の11位は、先週100位から急上昇した曲「B」が入た。さて、来週上位になるのは「A」、「B」どっちの曲?
この問題で誰かと1万円の賭けをするとして、「A」に張る人はいないと思う。じゃあ、「A」が5位で「B」が11位だったら?「A」が3位だったら?「A」1位だったら?売れ行きだけで勝負付けをするヒット曲ランキングと違い、1対1の勝負はもっともっと「今背負っている矢印の向き」が影響する。持っている(いた)力、実績、自信…それを元に「矢印の向きと大きさ」を掛け算するようなものだから。
その劇的な例を台湾で身をもって実感してきた渡辺監督の「寛容力」は信念なのだ。思えば、素晴らしい監督は、やっぱり1年目から非凡な姿を見せる。それは例え1年目でも、そこまでにしっかりと考えを固め、心の準備、信念ができているからだろう。
ずいぶん散漫な話になってしまったけれど、渡辺監督が大事にしているものは何なのか、そのためにどんな野球をやりたいのか、なぜそう思うのか。真弓監督にもぜひ読んで欲しいと思う1冊だった。
コメント
渡辺監督、現役時代、イケメンだのトレンディだのと、持て囃されていたけれど、活躍できた期間は短かったという印象があります。
しかし、ライオンズを去ってからの、いろいろなご苦労や体験が、今の監督業に活かされているのでしょう。
あの頃憧れた、スタイルの良さやサラサラヘアーは無くなりましたけど(笑)。
個人的には「頑固岡田」の方が好きですが、渡辺監督素晴らしい監督だと思います。
正直ターガースが暗黒時代だったころタイガースの次に好きだったのが西武だった。
特に好きだったのが、渡辺投手であり、まさに今年の西部若手の姿を生き写しにしたような自由奔放さがさわやかさを与えてくれたからであった。
しかし当時この人は将来指導者は無理だと思っていた。言葉は悪いが頭(野球頭)や、古い人間たちとの距離感の保ち方が良いようには見えなかったからだ。渡辺監督を見て思った。人間て環境と努力によって組織人に向いてない人でもカリスマ性のあるリーダーになれるんだなって!
これは世のサラリーマンに勇気を与えるすばらしい成功物語だと思う。
小学校の時、僕は阪急のファンで、遅い球で打者を打ち取る星野伸之を応援していました。その時ライバルであったのが、ナベQだったので、わりと古くから印象が強く、今回の優勝も嬉しかったですね。
寛容力、読んでみます。
関係ないですけど、当時はナベQが居て、工藤や潮崎が居て、清原、秋山、デストラーデが同じチームで、こんなチームに勝てるか!って試合見ていつも泣いてた気がします。
今考えてもひどい!寛容出来ない!w
うわ、びっくりした?!アマゾンのベストセラーランキングってのがあって、今朝までは「プロ野球・メジャーリーグ」のカテゴリで「虎暮らし」が1位だったの。
ところが今見たら「野球・ソフトボール」にあった「寛容力」とビジネスっぽいカテゴリにあった「頑固力」が両方とも移動してきて1位&2位になってる!これって偶然?それとも今日の記事が関係ある?(笑)びっくりした??
ジジィさん、なかなか面白い人です。私も岡田さん好きですよ。「vs」は人、監督というより本の話です。
バースと藤川命さん、本人は指導者に向いてないからこそ、成長できたって言っています。でもやっぱりまずは心ですね。
芹沢さん、確かに寛容ではいられない!でも(本当はそのちょっと前だけど)それに勝った当時のタイガースはエライ!(笑)
またも、本のお薦め。
こちらも「虎暮らし」発売までの間、絶対お薦めの一冊なのでしょか。
図書館に予約した「ホークスの70年」もまだ手元に来ていませんw。
正月は読書漬け(+酒浸り)になりそうです。
>関係ないですけど、当時はナベQが居て、工藤や潮崎が居て、清原、秋山、デストラーデが同じチームで、こんなチームに勝てるか!って試合見ていつも泣いてた気がします。
とにかく主役も脇役も揃っていましたね。
他にも、セカンド・辻、キャッチャーが伊東ですから。
よくプロ野球監督の著書や語録が世のビジネスマンのバイブルや
参考書として取り上げられますね。
数年前なら星野氏の本も持て囃されました。
如何に世間の管理職が、部下の統率に四苦八苦してる
かの証左かも知れません。
寛容。
これが会社に於いても、子育てに於いても、如何に難しい事か。
自らの経験からも、後輩や子供にもどかしさや不甲斐なさを覚える
自分に嫌悪感を感じたりする。
この系統の本が売れるのは、同じ様な悩みを持つ人が多いのかも
知れませんね。
生まれも育ちも西武線沿線の私が来ましたよw。
「寛容力」、私も読みました。「頑固力」発売日に本屋に行ったら置いてなくてorz、仕方なく買って読んだのですが、予想外に面白かったです(「頑固力」は翌日、他の本屋でを見つけて買いました)。
ナベQの現役時代を知る者としては、「あのナベQがこんな良い指導者になって...」と感慨深かったです。現役時代は広岡監督、森監督の管理野球、野村監督のID野球を経験し、引退後は台湾でのコーチ生活、西武ファームでの投手コーチ、監督と様々な経験を積んだことで、自分なりの指導者としてのを築き上げていったのでしょう。
監督就任1年目でいきなりリーグ優勝、日本一を達成しましたが、慢心することなく頑張っていって欲しいです。
来年こそ、阪神と西武の日本シリーズを見たいですね。
一虎ファンさん、図書館本は期限があるから先に読まないといけませんね。そうすると虎暮らしが後回しになりそうです(笑)。
未来さん、ドラフトはほとんど外していないし(囲っちゃってました)外国人も完璧(郭泰源もいたんですよね)でしたね。
西田辺さん、ただ寛容であれば良いということではなく、徹底的に関わるべき事と、寛容であるべき事とのメリハリ。なかなか優れた内容でした。
ぴゅあらっくさん、何事も素質のある人が有利に決まっていますが、「素質のない人」が成功する例もある。そんな感じですね。
どんでんは負けた言い訳をしてる
責任はオノレにあり
T倒さん(もうこのハンドルネームやめてもいいんじゃない?)、そのとおり。