度重なるチャンスを掴めなかったライオンズ、流れてきたチャンスを一気に掴んだジャイアンツ。手負いの獅子に反攻の目はあるのか、ジャイアンツ王手。
優勝できなかったという結果への評価と、チームとしての戦い方への評価は違うという話。
なぜ今年優勝できなかったか。それを考えるのは非常にムカツク作業ではある。いろいろ挙げることもできるが、ジャイアンツが普通じゃなかったというのが冷静な見方だろう。そして普通じゃない状態にしてしまったのがタイガースだった。終盤ジャイアンツに喫した7連敗が、せめて3勝4敗、悪くても2勝5敗であればなんてことなかった。ベイやスワに勝ちまくって猛烈に追い上げてくる。その不安が増幅し、体が固まってどうすることもできなかった。タイガースが心理的に追い込まれ、ジャイアンツが乗っていくという螺旋に巻き込まれたということだろう。
優勝できなかったという結果が残ると、ついつい「ジャイアンツにあって、タイガースにないもの」という観点にとらわれがちになる。負けたタイガースを全否定してしまいたくなる。しかし、それは大きな間違いだと思う。
東京ドームという特別に本塁打が出やすい本拠地を持つジャイアンツと、甲子園球場という特別に本塁打が出にくい(特に左打者は)本拠地を持つタイガースとでは、当然チームとして採るべき戦略が違ってくる。当然、打席で持つべき戦術も違ってくる。心理的パニックになる前のタイガースは、ほぼ完璧にその戦略・戦術を実行できていた。すなわち、率を下げてまで飛距離を欲しがらず、ライナー性の強い打球でアウトになる率を下げること。本塁打数において他球団に圧倒されていても、総得点数は最多をひた走っていたのだから、それはタイガースに合った戦術だった。
こと攻撃に関しては、ジャイアンツ的でなかったから負けたのではなく、「タイガースらしさ」が失われたから負けたのだ。もしタイガースらしさを失わず、あの7連敗を食い止められていたなら…。ホームラン数最少でも、四球の多さと勝負強いシュアな打撃でジャイアンツを制した、タイガースらしい攻撃を、私たちは心から誇っただろう。野球はホームランじゃない!そう声高に叫んだだろう。
しかしながら、本塁打、というより長打を否定するつもりはない。前半戦のタイガースにしたところで、わざわざ本塁打を捨てていたというわけではなく、本塁打が出にくい球場であるということと、特に前半は本塁打が期待できるような右打者に当たりがなかったことが数字になっていただけ。
飛距離は重要ではないが、速いスイング、速い打球、それがもたらす長打が攻撃を優位にすることは当然のこと。前半戦も決して当てに行くような打球ばかりだったわけではなく、強くて速い打球が多かったのだ。現に二塁打、三塁打は決して少なくなかった。
本来「ストライクだけを強く叩く」ことによって、結果的に生まれていたのが「繋ぎ」や「勝負強さ」。しかし、パニック以後は、各打者が「タイガースらしさ」を曲解してしまって、当てに行ったり、ボールを見すぎたりしていたように思う。その姿があまりに弱々しく見えて、対するジャイアンツの豪快な打撃との違いばかりが頭に残って、そして「今」なのだと思う。
欲しいのはホームランじゃないよ。ホームランは結果。欲しいのは、今年前半の攻撃。集中してストライクを強く叩くこと。スイングスピードを上げて速い打球のライナーを打つこと。ボール球にはバットをしっかり止めること。
チーム編成を考える時も一緒。飛距離のある打者が必要なんじゃない。確実性が高く、速い打球の打者が必要なのだ。
私たちが見たいのは「箱庭向け野球」じゃない。日本一素晴らしい甲子園球場で暴れまくる「タイガース野球」だ。
コメント
その点は真弓監督も決して見誤っていない。
「守りの野球」を前面に押し出そうとしている姿勢はtoraoさんの主張と違わぬ気がします。
ポリシーのないドラフト指名とも叩かれていますが、右の本格派に足肩が素晴らしい外野手と守備走塁のセンスを見込まれた二塁手。まさに真弓監督の「守りの野球」を体現する選手指名ぶりではないですか。
「ないものねだり」と「勝てば官軍」。
結果が出ないと、どうしても勝ち組の長所をうらやましく思ってしまいます。
でも、ぶれないことが大切ですよね。
Gが東京ドームに適したチーム作りに成功したように、ウチは甲子園を味方にする戦いをめざし続けるべきですね。
ところで、いつぞやの大阪弾丸ツアーの内容は、いつ、明らかにされるのでしょうか。
気になって「一晩中寝られない」。
to toraoさま
私も気になって仕方ない、です。早く回答を!
秋キャンプで真面目に練習しているバルちゃんが変身してくれたら良いですよね。
それとキャンプに選抜されなかった若い選手たちの必死さを期待しています。
小嶋くん来季は頑張れよ!
誠に笑止な表現だと重々承知ではございますが、あえて言わせていただきます。
21世紀のバース様が見たい・・
あの、ヒットを打ったのに「な?んだ、ホームランと違うんか?」などとがっかりされるような、そんな超長距離打者が甲子園に仁王立ちする光景を、死ぬまでにもう一度見たいと思います、私は。
>甲子園球場という特別に本塁打が出にくい(特に左打者は)本拠地
それを考えると、やっぱり85年のタイガースは球史に残る異常なチームだったんですねぇ。いくらラッキーゾーンがあったとはいえ、あのホームラン数は異常でした。1番バッターがあんなに打ってたなんて、今じゃ考えられない(笑)
幸い、85年打線の当事者にもかかわらず、新監督はそうした機微をわかっているご様子(前監督も基本的にはわかっちゃいたんでしょうが、プレッシャーのせいか愛犬の死のせいか、最後はわけわかめでしたね)。08シーズン前半の、あのシェアなチームバッティングの復活を願います。
……それでもやっぱり、あの伝説のホームランをもう一度見たい……バースぅ……(涙)
これはおそらく、85年を知るタイガースファンすべての心の呟きでしょうね。
>各打者が「タイガースらしさ」を曲解
どうも「つなぎ」という言葉について、各打者の意識が整ってなかった様な気がします。
シーズン前半の魅力的な攻撃は、「つなぎ」と言うよりも「連動」。
前の打者の攻撃が、次の打者の安打を生み、また次の打者の出塁を生んでいた。
決して「○○さんに回せば」なんて幾分消極的な意識は見えなかった。
ホームランは相変わらず少なかったが、それでも相手には充分驚異的な打線だったでしょう。
一体何処で狂ってしまったのか、全く別物の打線になってしまった。
でも、積極的な足を絡めた攻撃は決して間違ってはいない。
むしろ、本拠地と現行の戦力を考えれば最もベストに近い攻撃。
曲げる必要はないけど、全員の意識のベクトルだけは同じ方向に向ける管理はガッチリやる必要が
ありそうですね。
85年のチームは攻撃ばかりいわれるけど、実はデフェンスもすごかった。ファーストが穴、レフトが無難というぐらいで、名手揃いだったんだよね。結局伝統的に守備からリズムを作っていくチームだと勝手に思ってます。その典型が今年のCS第2戦で、バルの守備でリズムができた。反対に9月に今岡が戻ってきて、皮肉にもデフェンス、オフェンスともになんか全体のリズムがおかしくなっちゃった。その辺かなぁと思います。