「失敗してもいい」という言葉を聞くことはままある。でも、それよりも、「失敗したほうがいい」「失敗はしなきゃいけない」のほうが正しい。
北條に聞かせたい!?世界の盗塁王の極意(サンスポ)
ふだんはまったく読まなくていいコラム(いつも言うけどw)だが、ときどき古い人の面白い話があったりする。
「走って刺されても、なんとも思わなかった。走ることで相手にプレッシャーをかけて、試合の流れをつくって、得点につながってチームが勝てばいい。そう思っていたから」高橋慶彦
「相手が警戒していないときに走れば、失敗しない。でもそんな盗塁、意味がない。盗塁の“目的地”は二塁や三塁じゃない。いくつ盗塁するかじゃなく、その後、どれだけホームにかえってこられたかだろ」福本豊
野球は確率のスポーツであると同時に心理戦の要素が強いスポーツだ。データだけを見ていても、心理的な影響はわかりにくい。昔、「セイバーメトリクス的には盗塁ほど馬鹿げた作戦はない」といった文言を読んだことがあったが、そう決めつけてしまうのはデータの読み違いだ。
たとえば。
シーズンの中盤から終盤にかけて、優勝を争う勝負所がやってくる。そこで、一つの失敗からチーム全体が動揺し、ガラガラと崩れていってしまうようなことがある。失敗できるときに失敗しておけば、免疫ができてこれを防げる。そもそも失敗しておくことしか失敗の防御策はない。
「育成(教育)とは、命の心配がない程度に失敗を経験させること」という言葉を聞いたことがあるが、まさにそのとおりだと思う。
たとえば。
シーズンの序盤で盗塁をじゃんじゃん企図したとする。相手もそれなりに防いで、失敗もそこそこあったとする。失敗した当人は当然、どこが悪かったかがわかり、進歩をしていく。一方防いだ側はどうか。失敗を恐れずにチャレンジしてくるという情報が入る。そのときは防いだとしても、次、もしも重圧がかかる場面でチャレンジされたら防げるか、それはわからない。
この情報はやがてシーズンの勝負所で相手に重圧をかけていく。「可能性がある」というだけで、考えなければならないことや、作業を確実に増やすことができる。
昨年の盗塁企図数は広島、中日に続くリーグ3位だったが、今年はもっと増やしたい。とくにシーズンの序盤にどんどん失敗しておきたい。それは盗塁に限らず、走塁全般、そして思い切った守備や、大胆な攻撃の作戦にも言える。
失敗のフル活用でいこう。
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コメント
一昨年の最終戦で植田海が初一軍で盗塁を企画して失敗しましたね。
二軍では盗塁を失敗したことがなく、一軍でも成功するかと思いましたが、緊張からかリードも小さく刺されてましたね。
そして昨年は思いきってリードもとり、成功させてましたね。
失敗があるから成功を生むって事を感じさせられました。
若手選手は失敗しても前のめりの失敗であれば金本監督は起用してくれますが、そうではない失敗では怒りますね。
活躍してた俊介が前のめりの失敗では無かった時には怒ってましたからね。
タイガースの若手選手は萎縮せずに頑張って欲しいです。
野球用語としては「盗塁企図(きと)」。盗塁を「企画」は誤りとされていました。が、最近では解説者にも「盗塁企画」と言っている人がいますね。一応、豆知識です。
torao様ありがとうございます。
確かに企画は議論などで使う言葉ですね。
企図は企てる事の意味になるので、盗塁には企図の使い方の方が正しいですね。
企画を企図に言葉訂正します。
野球も日本語も奥が深く、難しいです。
「失敗したほうがいい」「失敗はしなきゃいけない」
まさにその通りだと思います。タイガースは人気球団であるがゆえ、失敗を叩くファンやマスコミが多い。選手がそれを恐れるのは仕方がないことですが、ベンチまでもがそれを恐れトライする事をやめてしまう。長い間このチームを見てきましたが、伝統的にそんな雰囲気があったように思います。
超変革を果たしチームを変えようとする今こそ、失敗を奨励し盗塁に限らず何事にもトライできるチームへと変わっていってほしいものであります。
そう言えば高橋慶彦と言う選手は、盗塁も多くするけど盗塁死も多かった
選手でしたね。
それでも印象としては、ガンガン走ってきてチャンスを拡大する方が強く
残っている。
バッテリーの立場からすると、盗塁成功率の高低はともかくランナーの足を
気にしなければいけないと言うのは非常にウザい事でもあります。
バッターは勿論勝負しなければならないし、クイックにも気を配らないといけない。
走った時の事を考えて真っ直ぐを投げたいが、それ1本で抑えられるほど甘くない。
キャッチャーも思考の何%かは走者に置かなければいけない。
セイバー指標の得点期待値とやらを持ちだすと、盗塁は必ずしも良策とは限らない
という結論になるのですが、「走る」「走りそう」という気配や記憶はそういった
指標とは全く関係ない。
何か「アウトになっても良いからガンガン走って相手を警戒させろ」みたいな話は
毎年してるような気がする(笑)
金本監督も就任直後は、割と積極的に動かして来ていたので、この論理は理解
出来ているのかなって思ってたんですが、シーズンが深まるほどに逆に消極的に
なっていった。
相手に与える影響よりも、アウト一つを惜しんでしまった。
失敗を単なる失敗として捉えるようになってしまった。
商人じゃないですけど「損して得取れ」って言葉があります。
欲張ったって得ばかりは取れませんよ。
盗塁は失敗するもの、という感覚で観ているのに阪神の選手はあまり走りません。
失敗しても成功しても相手バッテリーの心はざわつくもの。
それを大きな目的として掻き回して欲しいものです。
ファンは失敗すると野次る人が多いですが、励ますファンも多いということを選手は知って欲しい。
甲子園で応援の男性たち
「走れー!」「掻き回したれー!」
失敗しても
「よーし!よし」
「次、頑張れよー!」
この応援は、こちらまで心楽しくなります。
NPBにおいては、
盗塁成功:得点期待値+0.17
盗塁失敗:得点期待値−0.40
というデータがあります。
成功率が70.2%以下ならば効率的とはいえない、ということです。それ以上ならば得点期待値を高められる作戦ですし、成功させることのできる局面を選ぶ(バッテリーの阻止能力と走者の能力を見極める)首脳陣の働きが重要な作戦であるとも言えるでしょう。赤星のような球史に残るスペシャルな選手でない限り。
セイバーメトリクス的に馬鹿げているのは犠打と、打てない俊足打者を1・2番に置くことです。
昨シーズンチーム打撃成績のよく似ている阪神と巨人の得点の差はそこです。