「どーせ杉内なんて打てへんねやから、バルディリスやら桜井やら浅井やら、ズッラ??と並べて出したったらええねん!」
「ホンマに出してどないすんねん!」
という懐かしいツッコミが日本全国から巻き起こったこの日のスタメン。
1 3B バルディリス
2 2B 関本
3 1B 新井
4 LF 金本
5 RF 桜井
6 SS 鳥谷
7 CF フォード
8 DH 浅井
9 C 野口
P 岩田
確かに左打者には極めて打ちにくい杉内ではある。その理由は左打者のインサイド直球で出し入れができること。要は並はずれた制球力があるということ。
それはつまり右打者にとっても簡単には打てないということを意味するのだが、こういう左右の打者に関係なく安定した制球を発揮できる投手の場合は、額面通り右打者有利という数字が出てくる。
で、結果はどうだったか。
結果1=やっぱり杉内は打てなかった。7回5安打10三振。
結果2=だけど1点は取った。
結果3=杉内後の投手を打って、試合に勝った。
そう、杉内の投球は本当に素晴らしかった。だから打てないのは仕方ない。評価すべきは、それでも試合に勝ったこと。これまで杉内は中6日以上のゆったりとしたローテで使われてきたが、変則の交流戦、パウエルが抜けた中、エースの投球を続ける杉内には、当然中5日も要求される。この日の7回118球交代も、今後のことを考えれば無理はさせられないという判断であろう。
となると実に光ったのが、1?2とリードされた7回表の攻撃だ。鳥谷、フォードが簡単に倒れて二死。浅井が2?1と追い込まれた後、変化球にも直球にも食らいついて粘る。そうそう、オープン戦でもこれを見せてもらった。ベンチに残ったのはこの打撃があったから。粘っている内にタイミングを合わせる、ただ初球から積極的に振るだけの打者から、一つレベルアップした打席を見せていたよな。ついに8球目のカーブをセンター前にクリーンヒット!ナイスバッティン!この日杉内から2本目だ。
二死一塁、打席は野口。そう客観的に考えて、まったくあたふたする場面ではない。杉内、一走浅井をちらっと見て第1球、完璧な制球アウトロー直球でストライク。おおっと!浅井がスタートしている、二塁へ良い送球、しかし楽々セーフ!杉内の数少ない欠点は牽制やクイックが下手なこと。さらにちょっとした油断もついた素晴らしい作戦。
7回まで来て、同点の走者が二塁にいるとなれば、さすがの杉内も気を使う。野口もなんとかしようと、追い込まれた後、変化球と直球、どちらにも当てられるタイミングで食らいつく。粘る粘る。ついに11球目の低く外れるカーブにバットが空を切った。
しかし、もうこの回も終わったと、そんな気分になった二死から、浅井と野口で19球投げさせ、しかも同点を意識させてプレッシャーをかけた。恐らくホークス首脳陣は、球数もあるが、下位打線にこれだけ粘られると次の回は危険かもしれないという考えもあったはず。結果ゼロに終わったが、この攻撃が勝利の下地になった。
「ホンマに出してどないすんねん打線」と杉内の対戦を振り返ってみると、3つ凡退のフォード、チャンスの2三振を含む3三振の桜井は機能しなかったが、1番バルは得点に繋がる1安打、関本は犠打と、二塁打で好機を作り、そしてこの浅井と野口。思い切りの良さが功を奏したと言って良いのではないか。グッジョブ、首脳陣。
そしてもう一つ杉内を苦しめたのが岩田の好投だ。現在絶好調のリーグ奪三振王を敵に回して、堂々と投げ合った。制球力では太刀打ちできなくとも、緩急のコンビネーション、ボールのキレでは一歩も引けを取らなかった。
もちろんカウントを悪くしてスイングされてしまったことで失った2点、これは反省材料だが、今の岩田にそこまで求めるべきじゃない。今はただ野口のミット目がけて、目一杯腕を振って、打者と勝負するハートを鍛える時期。カウントを作ったり、相手に振らせない間合いについては、この日の杉内が大いに参考になっただろうと思う。エースの風格がちらちらっと見えて来たね。よう頑張った。
そしてジェフ。1点ビハインドの8回ウラをピシャリと抑えた。前2回失敗していて、神経質にならざるを得ない登板だったが、直球、スライダーとも完璧。再び去年のまったく危なげのないジェフに戻っていきそうな予感たっぷりの投球。良かった!そういうムードが9回に繋がったね。
あの頃を思い出せ!この日、ホークスが身にまとっていた「FDH」の復刻ユニフォームにはそういうメッセージが込められていたのだろう。03年、タイガースとの日本シリーズに勝って、日本一に輝いたホークス。以後、実力者と言われながら、変遷するプレーオフ制度に翻弄された。「もう一度」という願いを込めた好企画だと思う。
そしてその企画のせいもあってか、やっぱりホークスはホークス。前日の対戦でもそう思った。この日も、FDHの杉内の投球に苦しめられる。善戦はしても、いつかいっぱいいっぱいになってしまって、伸びやかなフルスイングで緊張の糸を切られ、一気に崩壊する。私の心もすっかりこの福岡ドームではどうしても勝てなかった03年の秋に戻っていた。それは「ここでは勝てない」なんていう気弱なものじゃない。もうなんというかイライラというか、ムシャクシャというか。絶対勝てよ、この福岡でFDHに勝つチャンスを逃すなよ。そんな感じ。ベンチの中で、同じような気持ちを持っていた選手、首脳陣もけっこういたんじゃないかな。
そんことは関係ない岩田が接戦を作ったものの、すでに9回表。ホークスの抑えホールトンがマウンドへ。04年からプレーしている鳥谷が内野安打で出塁。本塁まわりのアンツーカーで大きくはねる打球に苦しめられていたが、ようやっと味方につけた。無死一塁からフォードがライト線、フェンス直撃の二塁打。この打撃ができるようなら使う価値有り。さあ来た、無死二三塁!FDHに福岡で勝つのだ!野郎ども!
2安打の浅井に代えて葛城。そうそう、ここらへんの代打については、オーソドックスに行って欲しかったなぁ。8回表投手が久米に変わった時、先頭バルちゃんに代打桧山だったけど、ここをチャンスメーク上手の葛城。で、前の打席粘って粘って最高の内容だった浅井はそのまま(きっと打ったと思うんよ)。それでチャンスでなきゃ燃えない体になってしまった桧山を野口への代打とするのが手筋だと思った。
葛城チェンジアップをブルンと振ったがスカ。ガックリと崩れる。一死二三塁。
野口チェンジアップをびゅんと振ったがスカ。へなへなと崩れる。二死二三塁。
おいおいお前ら何やっとんねんっちゅう話や。
で、打者は…藤本か。で、代打は?出さないの、そう。残りは矢野、今岡か。おし、行け藤本。ああ、あかん。まっすぐにまったく雰囲気のない空振り2つで2?1と追い込まれる。粘れよ、そう03年の日本シリーズを思い出せ!甲子園でサヨナラ犠飛を打った、あの輝いていた日々を思い出せ!あ、ライトフライじゃダメだぞ。
ホールトンの精神状態も揺れに揺れまくっていたと思う。1点差のクロージングで、いきなり無死二三塁。開き直ったら連続三振で二死。出てきたのが、どっからどう見ても「小っちゃこいアンパイ」あと一人、あと1球である。心がはやる、体が開く。さっき空振りを取れた直球がシュート回転する。当てられる、外れる。ああカウント2?3、ああチェンジアップ振ってくれないフォアボール、満塁!ようやった藤本!私の中では03年並みに輝いて見えたぞ!
二死満塁、赤星。杉内対策か、首の養生か、スタメン外れて8回代走から2番に入っていた。さあここは押し出しもあるし、もう押せ押せだ。赤星頼む!リメンバー03!
積極的に手を出してファール、カウント2?1。4球目は足下インロー、「出来れば当たって」そんな白々しい逃げ方も、そこまでボール食い込まずボール、2?2。5球目今度は真ん中から膝元へのスライダー、低いのを見切って2?3!さあ大変だ!1点負けてて、9回二死満塁、カウント2?3!こんな追い込まれた状況はなかなかないぞ!それは投手も打者もだ!3走者は投球動作とともに一斉にスタート!投げた、低め直球、赤星バットを合わせた、そうこれ以上振るとレフトフライになる。今年の赤星はショートの頭の上しか飛ばない飛距離を完璧にマスターした。見事なレフト前ヒット!スタートしていたから当然二走フォードも余裕の生還!大逆転!よっしゃー!藤本&赤星、03を知る男たちで決めたぜ!赤星ガッツポーズ!ああ、やったよ、ついにやったよ…
うんにゃ、ここは福岡だ。まだまだ手を緩めるわけには、ガツン!うわあああ!新井ちゃーん!初球センター前!藤本ホームイン、赤星もホームイン!生還した藤本&赤星ががっちり手を合わせる!5?2!うおおおお!ぎゃあああああ!…はぁはぁ…。
最終回は藤川。影のヒーロー藤本は珍しく三塁守備に入っていたのだ、できんの?でも関係なかった。藤川が投げたのは10球。そして三者連続空振り三振。
怒濤の終幕。カタルシス。エクスタシー。昇天。いやあ興奮した。もうなんだかグッタリ(笑)。
赤星もインタビューで高ぶっていたけど、そら興奮状態の人間、刺激したらあかんわ(笑)。それだけの試合だったし、それだけの仕事だったからね。はー、ホント最高。言葉もないよ!
コメント
福岡在住の私にとってソフトバンクとの交流戦が1年で唯一の観戦となることが多いのですが、
昨日は今までで最高の試合展開だったと思います。
とくに藤本の打席は「応援してやらな打てん」と思って酸欠するぐらい声出しまくりでした。最高の仕事をしてくれたと思っています。
逆に球児の三者三振のときは「応援せんでも抑える」と思って休んでましたが(笑)
選手も大変だろうけど交流戦は3試合ずつやってほしいなぁ・・・
toraoさんの文章、読み応えありすぎです(笑)
9回に藤本にまわってきたとき、
私の脳内映像にはポップフライしか浮かびませんでした(笑)
サードの守備はもしかしたらプロ入りはじめてかもしれませんね。
それから浅井、オープン戦(神宮)での粘りを思い出させるバッティング!
今は桜井を使うより浅井と感じました。
おはようございます。
昨夜の現地の興奮がおさまった所にtoraoさんの熱のこもった文章、すっかり蘇ってきました。
>私の心もすっかりこの福岡ドームではどうしても勝てなかった03年の秋に戻っていた。
まさにそんな感じでした。
しかし9回の攻撃時は異様なムードが高まり
藤本が四球を選んだと同時に涙が溢れてきました。
野球観戦で泣いたのは初めてです。
生意気にもここで勝ちを確信していました。
思い出すだけで胸が熱くなるような試合に参加できて幸せでした。
虎ナインに感謝です。
藤本のサードはご愛嬌です。
珍しいものを見せていただきました。
藤本、代わりっ端にゴロ処理してました。
送球の格好が変な感じでした。
やっぱり桧山の順番と浅井への代打は良くなかったですね。藤本、赤星が救ってくれて助かったです。
今日からDHのない甲子園なんで、選手起用も落ち着いてできるでしょう。
勝利を諦めていた自分が情けない。
一気に読めてしまう感動の再生、感謝です。
元気と勇気と感動をもらっているタイガースには「ありがとう」の繰り返しです。
toraoさんの臨場感あふれる文章、いつも以上に楽しませていただきました。
……でも、けいわいさんのコメントは、ほんとの「現場の声」でしたね(笑) 私もあの場にいたら、9回表の攻撃で疲れてしまって、9回裏の球児の投球見ながら休んでたかも。
ちなみにFDHユニの件は、わざわざヤフドの阪神戦に持ってくるあたり、私は「いやがらせだ……」と思ってました(笑)
見事な逆転劇!と言いたいが9回の選手起用がどうしても腑に落ちず心底喜べなかった。
やっと掴んだチャンス、無死2・3塁。打順は下位で浅井、野口、藤本の並び。昨日の打撃状態なら浅井でなんとか同点になっても逆転までは厳しいかな・・
だが浅井に変えて明らかに最近調子落ちでミスショットがめっきり増えた葛城の起用。これでガクッ↓
葛城出すなら藤本のとこだろうよ、それで最後の守備固めが今岡だけだったとしても仕方ないこと。今岡を起用し続けることもそうだが現状の桜井を一軍に上げたのは?第一打席なんて、どんだけ?!ってぐらいバットとボールに開きがあったか・・こんだけ貯金あってなぜ下でもっとじっくり調整させないのかな?バルなんて使えば使うほど上手くなるんだからベンチで休ます意味がない、わからん。日曜は忙しいのに愚痴らずにいられんかった。
赤星、ごめん。あの手のPなら得意のネバネバファール戦法で間違いなく押し出しだなと見てたが・・GJ!
暴言については最近はファンの野次もスマートになったから久々に懐かしい気分。おいらの周りでも野球の話で熱くなるやつなんて見かけない。たまにはこういうのも良しとしよ。
toraoさん、テンション上がりすぎて「カタルシス」が「語る死す」になってますよ。w
今シーズン指折りのナイスゲームでしたね。
それにしてもこの試合、岡田監督の選手起用は凡人には理解不能でしたね。もう普通に戦っては杉内に太刀打ちできないと腹くくった捨て身の采配だったんでしょうか?
総力戦の勝利は盛り上がりますね。
それだけに出番のなかった今岡が…。
昨日の朝、雨予想に反しての曇り空
こりゃ試合あるぞと携帯傘を鞄に入れ
ナゴヤ球場の試合(二軍)に行ってきました。
ありゃぁ? 先発はお杉だぎゃ? 席に座ったも束の間、先頭のD藤井に
惚れ惚れする先頭打者HR・・・
やはり3回からポツポツきて
5回は富山状態・・・やっぱり雨男だぎゃぁ
大雨で寒いし家路に・・
口直しに1軍の試合を見て
2軍が弱いのはよく解りましたわ
toraoさん完璧な解説ありがとうございます。まだ昨日の余韻に浸っている感じです。
あんな凄い試合を球場観戦されたかたは幸せだと思います。(ちなみに昨年は東京から福岡へわざわざ観戦行って杉内に手も足も‥‥)
昨日の試合は、まずゲームを作ってくれた岩田に賞賛を挙げたいと思いたい!それにしても、5番候補の二人誠ちゃんと、広大ちゃんが2軍行き!遅すぎたと思うが、岡田監督だしなと思って納得しましょう!しかし、野口、矢野という名捕手がいますが、浅井を1軍に上げたのがいいですが、もう1人上げるべきではないかと思います!ぜひ、北京対策として清水捕手を1軍に招集を!
関本変えた時、バッティングより、次の守備からサードどうするのかが気になって
仕方なかったんすよね。。
守備固めで今岡かーなんてw
で、あえてFDHのユニフォーム着てリベンジの機会を与えてくれたホークスありがとう。
それにしてもパリーグ。ロッテとオリックス除いて強いすねー。
セリーグの負け率高すぎ。
いかにロッテとオリックスを落とさないかがこの交流戦のキーになりそうすね。
オカちゃん、たまーにヤケクソに見えるメンバー組みますよね。
しかしさすが杉内はそれだけの相手やわ。
その杉内を相手に一歩も引かず投げ合った21番を背負った岩田に惚れ惚れ…。
野球モノのドラマや映画でこんな試合展開の筋立てを見せられたら、「そんなうまいこといくわけないやん」と言いたくなるような結末でした。
野球ってほんと、素晴らしいですね。
「ホンマに出してどないすんねん!」
川藤氏もそう思ったかもしれません。
理解不能なところ多々あっても何もしてくれないよりは楽しみがあります。
さて、今季初先発の上園不安いっぱいだけど勇気をもって攻め込め!
両チームの打率はほとんど同じ。HR数72対20。しかも西武は右の大砲揃いときてる。
しかし、Bクラスチームからカブレラ、和田の二枚看板が抜けてこの変貌は奇跡です。
桜井あたり一年預けてみたら大バケするかも・・・。
私もけいわいさんと同じで毎年地元での観戦を楽しみにしている一虎ファンです。
ホントにナイスゲームを見させてもらいました。
9回表はまさにヤフドが聖地”甲子園”と化してましたね。
toraoさんが言うように9回の逆転劇は7回の浅井、野口の粘りが生んだのだと私も思います。
こんなに夢と感動を与えてくれる選手たちをギュッと抱きしめてやりたい。。素直にそんな気持ちになりました。
阪神最高!!
toraoさんいつも的確な解説に本当に感心しています。負けたときは余り見たくなく、勝ったときに振り返って読んでいます。ところで、東京朝日新聞のスポーツ記者かデスクは間違いなくガチガチの阪神ファンだと思いませんか。負けたときは、まるで阪神戦が無かったように無視して、昨日のようなときは「虎逆転30勝・・9回2死赤星決めた・・・」20年くらい前まではずっと関西育ちの関西住まいでしたから東京と大阪の紙面が異なることがあったので念のためにお知らせしました。toraoさんのずっと前からの隠れファンから・・・・・
最後にサードに入ったのが今岡ではなく藤本ということで,ついに誠も追い詰められたしまった感がある。
晩年の川籐ぐらいになってくれたらいいが,キャラは違うし給料も高すぎるし,パのチームがDH候補で手を挙げるなら送り出してやりたい気もする。
二軍落ちらしいが,監督は本当にここまでよく我慢したよ。
掛布の時と同じ歳だよね,プライドもあるやろうしとりあえず見守ってやりたい。
福岡在住 の虎ファンです。
興奮しましたよー レフトスタンドで 虎ファンたちに囲まれて一丸となりました
ううっ 涙が出そう・・
オーダーに 僕もびっくり 1番 バルちゃん
何年か前の 1番 スペンサー を思い出しました。
ありましたねぇ、一番スペンサー。確か三塁線を抜ける二塁打かなんか打ちましたね。負け試合だったけど。
昨日のゲーム‥
浅井に光明あり
桜井&今岡鍛えなさい!
名将には、貼り付けを捧げましょう!