クラシリが終わって、だいたい思っていたとおりの反応があちこちから。
すなわち、球界&野球ファンからのブーイングだ。もちろんMLBのように、チャンピオン同士の勝ち抜き戦なら誰も文句を言わないだろうが、チャンピオン以外が勝ち上がることへの疑問が方々で上がる。曰く「長いペナントレースを勝ち抜いたリーグ優勝が何の意味もない」。
「長いペナントレース」に最高の価値を置きたいのなら、1リーグ制にして真の「長距離チャンピオン」を決めたら良い。でもおそらくそれには多くの人が反対なのだろう。だから「長いペナントレース」の価値が重要なのではないのだ。そうではなくて「真の頂点」たる日本シリーズの価値に傷を付けたくないということなのだろう。
わたしだって野球マニアのはしくれなのだから、もちろんその気持ちは良くわかる。しかし現状ではもうそれは「マニアの夢」でしかあり得ないと思う。
「バレーボールけっこう好きだよ」「ラグビーよく見るよ」「Jリーグもチェックしてるよ」そういうスポーツ好きだって、もっとも試合数の多いリーグ戦をすべて追いかけている人はまずいない。それはほんの一部のマニアだけだ。ごく普通のスポーツ好きは、重要な試合、大きな大会だけ熱心に見て、あとは結果だけをチェックしたり、ポイントだけ情報を集めたりして状況を把握しておくということになるだろう。タイガースマニアの私は、タイガースの試合はほとんどすべて見るが、特にパ・リーグの方はふだんの試合はまず見ない。でも当然情報はチェックしている。あまり書かないけど、他のスポーツもいろいろチェックしてるしね。
えーと何が言いたいかというと、野球は、過去国民的人気を誇ったが、これからは他のスポーツに近い存在になっていかざるを得ない、つまり「マニア向け政策」だけを押しつけていると、一般のスポーツ好きからもそっぽを向かれ、ただただマニアの減少に歯止めがかからなくなるということだ。マニアだけが満足できればOKというのじゃダメ。特に地元で広く多くの人に応援してもらいたいというのなら、マニア路線だけではなく、一般路線も充実させていかないといけない。
クライマックシリーズというのは、まさに一般路線なのだ。パ2の最終決戦とセ2の初戦がダブった10/18、関東のTV視聴率は、
13.8% 19:00-21:54 NTV プロ野球セ・リーグ・クライマックスシリーズ
*8.3% 19:04-21:54 EX* プロ野球パ・リーグ・クライマックスシリーズ
であった(「プロ野球の視聴率を語るblog」より拝借)。
これをもって、「やっぱりジャイアンツだ」という感想を声高に叫ぶGファンもいるようだが、まあそりゃあれだけ露出しているんだからジャイアンツが多少なり特別でなきゃおかしいわな。ただ、実際パの試合は21:09には終了していて、その後は「優勝後のまったり」を流していただけなので、熱戦続くセに流れるのは当然。で、ちょっと計算してみた。この約3時間、関東の22%以上(少数とはいえBSやCSもあるからね)の家庭でいずれかの野球を見ていた。パの試合終了後、3%を残してセに切り替えたとする(その間セの視聴率は19%ということになる)。そうするとパの試合中の視聴率はだいたい10%近くはあった勘定になる(その間セは12%)。パの試合展開がワンサイドになったこともある。だからこの数字の要点は「やっぱり巨人」ではなく、クライマックスシリーズの話題性(成ビッシュ含めてね)で、野球人気がもっとも危ない関東において、少なくとも22%の視聴率を稼げるということが重要なのだ。
ふだんの関東G戦の視聴率は10%に満たないのだから、それに加えて12%以上の人が野球をじっくりと見たということ。中には普段はCSなどの有料放送で自分のひいき球団の試合を見ているマニアもいるだろう。中には普段はまったく野球を見ない人もあるだろう。大きな試合だからという動機かもしれないし、ダルビッシュが見たいだけかもしれない。中には子どもを含む若い層や女性も含まれるだろう。こういうマニアだけで閉じない試合は重要だと思うのだ。
もちろんクライマックスシリーズに付帯して、消化試合の集客を向上させる効果もある。特に両リーグ三つ巴になった今季は、それが顕著だった。
問題はペナントレースの価値。それを知っているのは他ならぬマニアではないか。それで良いではないか。
散漫になってしまったが、まとめると「そら私だってマニアとして不満はある。だけど現状では、こういうのも絶対必要だ」ということ。理想を言えば、1リーグ15チーム3地区制や、2リーグ16チーム制で、チャンピオン(&ワイルドカード)の勝ち抜き戦にするのが一番だけどね。
さて、G戦視聴率は、優勝した今季も歯止めが効かない。G戦の全国中継はもっと減っていく。サンテレビなど独立U局のある地域のチームは良いが、そうでない地域(G戦の差し替えで地元チームが中継される地域)では、たとえ地元視聴率が良かったとしても中継が減らされることになる。マニアは有料放送に移行していくのだろうが、一般の注目は薄くなっていく。クラシリ以外にも一般向けの施策が必要だ。
アメリカプロフットボール(NFL)ではマンデーナイトフットボールという全国中継がある。ふだんはほとんどの試合が日中同時に行われ、各地域でローカル中継されるのだが、毎週月曜に1試合だけ(最近は日曜夜にも1試合だけ)、夜のゴールデンタイムに全米中継される。試合は、各チームがもちまわりで登場するように、と言いながら、なんとなく一般の関心が高そうなゲームをピックアップする。フットボールファンはもちろん、ふだんはNFLを見ない人でもマンデーナイトだけは見ると言う人も多い。
クラシリと同じように、例えば月曜夜は、1試合だけプロ野球が全国中継される(他球団は日程なし)、作り方もちょっと凝ってみる。頼みは、全球団の野球ファンが見て、盛り上げていくという姿勢。初めは辛くとも、そんなことを続けていくのはどうかな。
タイガースのコーチ陣やイベントの発表があったね。そんなこんなはまたおいおい。
コメント
>野球は、過去国民的人気を誇ったが、これからは他のスポーツに近い存在になっていかざるを得ない
過去を詳しく知らないのですが、今は他のスポーツの報道が多くなって、野球もスポーツのひとつとなっているというか。今朝、フジのめざましTVの北海道からの中継で向こうのレポーターがファイターズユニ着てましたが、フジTVで日シリ中継もないのに「いいのか?」と私が気をもんでしまいました。笑。でも「北海道では日本ハムで盛り上がってます」と言ってたから、いいんでしょうね。これが地域密着なんだなーとつくづく思いました。クラシリの話題で「来年、生ダルを見たい」という友達が出現しましたが、私に言われてもねぇ。セとパとペナント(いつもの)と交流戦との違いから説明しております。
今後のプロ野球のシステム作りをされる方には是非、読んでいただきたい素晴らしいコメントだね、まさに正論。
おいらは幸い、サンテレビが見れる地域に住んでいるために周りの野球熱(阪神熱だけだが)はそう昔と変わらず熱いものがあってなかなか気付きにくいんだが、他の地域(特に首都圏)は想像以上に野球離れが進んでいる。
わがチームの事ばかり考えていてはどんどん野球離れが進むだけ、関係者は共存の道をしっかり協議していかなければならない。
我々ファンもそう、相手チームあってこそプロ野球。もう巨人戦の視聴率が悪いのを喜んだり、他チームの観客動員が悪いのを見下したりしてる場合ではない。
甲子園における相手選手、ファンを不愉快にさせる応援スタイルも野球熱を下げている一因である事を真剣にとらえて新しいスタイルを考えないいけない。
昔、日ハムファンだった友人を皆で変人扱いしてしまったが今後は野球ファン=変人orマニア なんて扱いを受ける日が来るかもしれない。
>アメリカプロフットボール(NFL)ではマンデーナイトフットボールという全国中継がある。
NFLの場合、放送権をコミッショナーが一手に握っているから、リーグ全体の利益に沿う権利行使が可能だし、結果としてNFLの高人気高収益を実現してるんですね。対する日本のプロ野球は(特定の)球団が放送権を握って離さないものだから、全体利益につながる方策が取れないわけで。読売Gの衰退とプロ野球放送の衰退が結果としてニヤイコールになるのも仕方ない。現代のプロスポーツビジネスにおいて、放送権益は利益の屋台骨。プロ野球黎明期ならいざしらず、成熟した今となっては、放送メディアが球団経営に参画参入することは、権利権益を最大限に行使する上で、弊害以外のなにものでもないでしょう。そのことをNFLが身をもって教えてくれているですがね。
野球ファンとしては、そこにガチンコ試合がある限り、積極的に楽しみますが、6球団のうち上位3球団参加のプレーオフは、どう工夫したところで、敗者救済の印象をぬぐえません。
レギュラーシーズン「なんちゃって3位」で、クラシリでも惨敗だったから、おとなしくしていますが、ウチがGの立場だったら気持ちは収まっていないと思います。
NHK教育あたりが「マンデーナイト…」をやってくれたらいいですね。
ちょっと立ち寄らせていただきます。野球ファンの意識変化は隔世の感がありますね。相手チームがいなければ自分のチームの反映はない、まさにこの精神が重要だと思います。この意識が野球ファン全員にあれば、プロ野球は人気スポーツとしてやっていける可能性があると思います。
関東で野球人気が衰退したのは、地元チームが貧弱なため多くの野球ファンがサッカーなどの他のスポーツへ流れたのに加え、若い世代に野球の面白さを伝えてこれなかったためだと思います。
私もいわゆる野球難民の一人。神宮には野村監督時代は良くいってたものでした。
私がスワローズを応援していた時は、阪神戦もファンは五分五分の入りだったと思います。
ただその時はまだよかったけど、フロントが人気チームに遠慮したせいか燕ファンであっても大事にしてもらえなかったように思います。
そんな中徐々に神宮から足が遠退き、スポーツ新聞も買わない自分がいました。
ある日友人から代表戦を誘われ、そこには応援のし甲斐のある環境を見つけ、さらにはJリーグの赤クラブの試合では、常にサポーターを大事にしようとするクラブ側の熱意に感銘を受け、関東人である自分がアイデンティティを感じられるのは野球ではなくサッカーだとの”洗礼”を受け今に至っています。
野球は今も自分の”祖国”であり気にはなる存在です。野球もサッカーも面白さの質は違うものです。
双方の発展のため早く環境作りを急ぐべきではないでしょうか。
確かに、2リーグ12球団でプレーオフと言うのも
無理矢理感は否めないし、制度改革の余地は残されてる
とは思うけど、現状はプロ野球を地位維持・向上の為には
必要なコンテンツになってしまっていますね。
前も言いましたけど、ペナントとクラシリは別物。
(順位は参考にするけど)
「あれはアレ、これはコレ」と区別する方向にしないと、
何時までも「真の王者」論議が治まらない。
どうしても「真の王者」を!と言うのなら
社会人も大学も独立リーグも夫々の王者が集って
やるしかないでしょ。
3日間ぐらいのトーナメントで、開催は毎年各地持ち回りで。
あら?今日も大きく逸れてしまった?
MLBのプレーオフシステムは秀逸だと思います。
NPBを3地区制に置き換えてみたらどうなる?と妄想(笑)してみました。
東地区:F79勝,M76勝,E 67勝,L66勝
中地区:G80勝,D78勝,Bs71勝,S60勝
西地区:T74勝,H73勝,Bu62勝,C60勝
地区分けは地図をみてなんとなく。
順位は勝ち数で。
各地区1位(F,G,T)とワイルドカードDが進むプレーオフは
F対D、G対T
これが同時進行したら、わくわくするなー。
現実でなんちゃって3位のTが、CSでFと互角に渡り合ったMを
さしおいてプレーオフってのはおおいに気が引けるけど。。。
to メルさま
フジ、ナゴドの試合の日シリ中継あるよ。
やっぱりねー、若くてピチピチしてカッコ良い投手が画面にアップにならないとダメね(笑)。
to banzaiさま
まったくそのとおりですね。特に球場の雰囲気作りについては、球団がファンに介入するくらいの気概でやってもらっても良いかも。とにかくスタンドをいっぱいにすること。それがあれば、他は後からついてくると思います。
to いわほーさま
いつまでたっても同じ話の繰り返しでイヤになります(笑)。「全体の利益を最大化させるために、一部の利権を制約する」たったこの1行のことを実現するために、NPBはあと何年かけるつもりなんでしょうね。そしてそんな感じでいつまでやれると思っているんでしょうね。はあ。
to 一虎ファンさま
>…どう工夫したところで、敗者救済…
そういう見方もあるかもしれませんね。でも一番面白い日本シリーズのためには、今一番強いチームの対決というのも見応えあるかもしれませんよ。日本シリーズのあとアジア、そのあとワールドシリーズチャンプと対決するなんてことになったら、短期決戦チャンピオンこそが出場にふさわしいと思いますから。
to 昔燕今赤さま
貴重な体験談、ありがとうございました。野球にまったくときめきを感じなくなって、サッカーに行った人を私もたくさん知っています。関東にいる私がそうならなかったのは、ひょっとしたら奇跡に近いかも知れません。それだけ野球(の運営)はダメです(笑)。
でも、見てもやっても、私にとって野球はこの上なく楽しい。だから、ダメな連中を向こうにまわして、何かできないだろうか、そう思う毎日なんです。
今日の大一番、勝つと良いですね!
to 西田辺さま
従来の日本シリーズまでの流れはそのままにして、それとは別のトーナメント戦で国際試合まで繋げるというのはアリかもしれません。とにかく「これで良し!」とは思わないで欲しいです。
to uriko1999さま
なんとなく悪くないですね。でもやっぱり1地区5チームは欲しいです(笑)。