ゼロを1にしたその後は

昨日、金本監督は「ゼロを1にした」と書いた。具体的に何がゼロだったか。
それは「健全な競争がチームを強くするという価値観」だ。

誰もが口には出していた。しかし、実際は「チャンスのない球団」だった。順位が下がれば金をつぎ込んで、「補強」という名の劇薬に頼った。結果、主力とそれ以外との間には「越えられない壁」がそびえ立った。口では競争と言いながらも、壁がどんどん高くなるのを看過し、壁を壊すにはどうしたらいいかを考えようともしなかった。

健康は、自然治癒力によって維持される。その力が発揮できなくなったからといって、常に劇薬を取り続けていれば、それは薬物依存症でしかなく、日常生活すら維持できなくなる。どこかで薬に頼らず、体が本来もっている強さを回復しなければならない。

しかしそれには、薬をやめることによる一時的な症状に耐えなければいけない。本人に耐える意志があったとしても、それをよしとしない価値観との軋轢に耐えなければいけない。
その旧来の価値観では、決して抜本的な解決は望めない。「進歩のない選択肢」のことを「計算できる選択肢」と呼びながら採りつづける。病気を直さないことを前提にするなら、もっとも手軽に症状を抑える選択肢ではあるから、根強い支持が一定数あるのだ。

ドラフト改革などで球界にフェアな競争状態がもたらされると、「最終的には薬に頼らないチームが強い」という常識ができてきた。遅れた阪神球団だったが、それをやらなければ進歩がないと気づき、旧来の価値観との軋轢に勝てる人物、金本知憲を監督に選んだ。

その結果、壁を壊す作業を断行し、薬に頼らない健康の価値を知らしめた。「ゼロを1にする」作業だった。金本知憲でなければできただろうか。

しかし、1を2に、2を3にという仕事にはまた別の能力が必要だ。それを爆発的に進めなければ、薬物に依存しきっていた弱った体の回復を支えきれない。

矢野燿大の名が後任としてあがっている。ここまでの経緯をそのように整理すれば、適任だと私は思う。新しい価値観を強めていく意思を明確に維持して、同時に弱った体を回復させる気配りができる能力を持つからだ。もっとも勝負の世界ゆえ、トントン拍子に好結果がもたらされるとは限らない。でも、金本の志を矢野が引き継ぐことに意義がある。矢野で力が足りなければ下柳でもいい。福原でも藤本でも濱中でも赤星でも今岡でも新井でも……とにかく金本が生み出した「1」をコツコツと大きくしていくことに価値観を同じくするものが集まり、継いでいけばいい。
補強をするなではない。外部招聘をするなではない。劇薬や麻薬に依存しきって、それさえしていればなんとかなるという弱さを克服し、自分自身が強くなるのを第一にせよということだ。


週刊虎バカクラブ
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11 コメント

  1. なかっち
    Posted 2018年10月13日 at 10:44 | Permalink

    個人的な予想としてこのオフタイガースはFA補強に動き出すと思います。名前が挙がってるビッグネーム(丸、浅村、中田)が宣言すれば3人とも取りに行くかもしれないとも思ってます。

    別に取るのは構わない。現在の戦力で勝てるとは到底思わないので。
    しかし、タイガースの悪い所はその選手をレギュラー扱いしてしまう所。あくまでも競争があり、補強した選手でも競争で負けたら控えに回る。そんな厳しさがあればタイガースは強くなると思います。競争が激化すれば選手個々ねレベルは上がるはずですから。


    そんなチームにしてくれる監督候補は誰か?フロントは考えてほしい。
    矢野さんにいきなり5年契約提示とか意味がわからない報道が出てます。大丈夫なんですかねこの球団は(笑)

  2. 西田辺
    Posted 2018年10月13日 at 11:10 | Permalink

    チームを強くするために、現時点で賄いきれない部分を補うのが「補強」。
    一時スタメンの中に、ドラフトで阪神に入った選手が鳥谷だけって言うのも
    ありりましたね。
    補強選手なしにチームが成り立たない、およそ正常ではない状態が長らく続いた。
    球団に何のビジョンも無く。
    金のかかる優勝をする事も無く、客が離れるほど下位に沈む事も無い。
    球団・親会社としては非常に飼い心地の良いペットの様なものだった。
    ところがパ・リーグを中心に、育成の力でチームを強くする手法がセ・リーグを打ち
    のめし、球界を席巻し始める。
    セ・リーグも広島が長年の育成努力が実り、黄金時代を迎えようとしてる。
    阪神も選手の育成を中心にチーム作りを、と言う事で舵を切ったかに見えました。
    でも本当のこのビジョンは、球団やその上の親会社にまで浸透していたのでしょうか。
    過去のチーム作りやドラフトの影響で、中堅以上がスカスカのチームが若手を多く
    使えばどうなるかの覚悟はあったのでしょうか。
    当の金本監督にも、目算の甘さがあった事は否めないでしょうね。
    筋トレや素振り、きつい練習をガンガンやらせれば勝手に伸びて行くだろうと思って
    いたのかも知れない。
    金本の最大の判断ミスは、自分がやれたからお前達も出来るだろうと考えた事。
    自分が球史に名を残すレジェンド選手だと言う自覚が無かったんでしょうね。
    余りにも色んな事を性急に選手に求め過ぎましたね。

    次の監督が誰になるか分かりません。
    掛布氏がなるなら、自主性を重んじ、やらない選手はドンドン脱落させるでしょうね。
    岡田氏がなるなら、口煩い位「野球」について叩き込むでしょう、付いて来れる選手
    だけが残るかも。
    矢野Cがなるなら、今年二軍監督をやった事から一番スムーズな交代になるでしょうね。
    誰が監督になろうとも、球団フロント・親会社にまで意思統一が出来るか否かなんですよ
    最も重要なのは。
    チームや球団は「選手を育てて強いチームを!」と意気込んでも、上位機関が「いやいや
    とにかく来年からすぐAクラス入り続けないと困るよ。ダメならすぐクビ!」なんて
    バラバラな事をやってたんでは、低迷の未来しか見えません。
    監督の首を挿げ替えるだけでは強くならないし、今度こそ芯の通ったチーム作りを。

    今日は、CSを向こうに回してナゴドで今季最終戦。
    金本監督最後の采配。
    未来の見える野球で、金本監督を送ってあげて欲しい。

  3. にとりん
    Posted 2018年10月13日 at 11:25 | Permalink

    補強は劇薬ではないと思います。そして金本監督政権下でも高橋・球児・糸井を獲得しています。勿論外人選手も。和田政権下の補強(西岡・福留・日高)と変わりません。それまでの監督が補強に頼っていて金本監督はそうでなかったという論調はあまり同意できません。
    金本監督は就任時に勝ちながら育成することを目標に掲げていましたから、育成の為に補強をおろそかにしていたわけではないと思います。
    日本人補強は活躍しても助っ人野手が外れで優勝できず、順位が下に沈み、育成が進んだというのは皮肉的ですけどね。
    金本監督の良かったところはお試し選手の多さでした。代表的なのは原口で、そのフットワークの軽さに「この監督の下では育成選手でもチャンスがあるんだ」と希望が持てましたから。最終年になるとそれも少し陰ってしまったのが残念でした。

    後任は矢野二軍監督がほぼ確実とのこと。矢野なら金本監督の色を消してまたリセットということはないでしょう。一軍二軍両方見ることができた経験が生きるのを期待しています。
    フロントも反省して長期契約を…って言ってますが気に入らなくなると途中解任するんだから意味ないじゃん。大丈夫かなこの球団フロント。

  4. 昭和49年
    Posted 2018年10月13日 at 11:26 | Permalink

    トラオさんの、劇薬理論と金本体制の総括は見事です。深く深く腑に落ちます。多くの人に批判されがちな球団上層部の考えも、それなりの意思決定プロセスがあるように思えてもきます。トラオさんの感性に触れながら、数年後の阪神ファン歴50年を目指します。

  5. 大和
    Posted 2018年10月13日 at 12:30 | Permalink

    トラオさんの次期監督・矢野推し論、全く同意です。
    私の思っていることを見事に文章にしていただきました。

    追加すると、私がプロ野球ファンになって35年、矢野燿大は最も好きな解説者の一人でした。
    一見(一聴?)すると、ただのタイガース応援団のような解説に聞こえますが、盗塁のタイミングを見抜いたり、味方や相手の細かい動きを観察し、適切な対処法を解説するところにいつも感嘆していました。

    金本政権の初年度には矢野ヘッドに大いに期待していたので「やっぱりベンチに居ると解説の時と違ってしまうんだな」とガッカリしました。
    しかし、シーズンオフのラジオ番組で「今年は殆ど監督に意見できなかった。来年はどんどん思ったことを進言していく」と宣言し、実際に特に投手継投のタイミングなどが見事に向上しました。金本が変わったというより、きっと矢野がビシバシ進言しているんだなと思ってみていました。
    それだけに今季に二軍監督へ転身し、片岡がヘッドになると聞いてかなり不安を感じていましたら案の定、意味不明の投手起用が復活し迷走しました。

    そして二軍は矢野新監督の超積極野球で優勝。この点でも矢野の能力は相当のものだなと感じたものです。インタビューを聞いていても「27球で負けてもいいから初球から振っていけ!ストライクカウントが増えるとヒットの出る確率が減るんだ」など、選手の失敗をベンチが担保していることを強調していて、金本と正反対だなと思っていました。尤も、これを一軍で本当にできるかが鍵になりますが。

    トラオさんと考えが違うのは、私もにとりんさん同様、補強はしてもいいと思っています。
    某タイガース大嫌いスポーツライターも、阪神の移籍選手の活かし方だけは非常に評価していました。
    伝統的にも長崎や弘田、野村収、金本、下柳、伊良部、アリアス、シーツ、そして矢野燿大自身など移籍選手をうまく活かして優勝してきました。

    とはいえ結局、監督が誰になろうが長期的なビジョンをもってチーム作りをする球団に変わらないと金本の悲劇は繰り返されることになるでしょう。

  6. こうさん
    Posted 2018年10月13日 at 12:33 | Permalink

    3年前の自分のハシャギっぷりを見て自戒する為に2015年にタイムスリップ。気になったのは金本監督誕生…ではなく10月17日の「球団経営トップの責任(確か)」だ。トラオさんが書いていたことが…タイガースという球団は全く学習していない。なんか一つの田んぼを色々な人に耕させてるような。「あの人は最新のトラクターを持っているらしい」、「あの人の知識はこの田んぼに合うはず」、「あの人は力持ちらしい」、「あの人はいい奴らしい」…この13年、タイガースという田んぼには何が実ったんだろ?それでも国(ファン)から生活が保証される現状。

    「吉田投手、タイガースが指名の権利を獲得❗…なぜか頭を抱える吉田投手‼️」なんて光景が現実にならないよう。

    トラオさんの今日の文章、何度も読んだうえで…それでも俺は落合さんを待つ。

  7. 虎蜂
    Posted 2018年10月13日 at 12:58 | Permalink

    掛布さんのように完全に選手任せにできるほど今のチームは大人ではなく、岡田さんは負け癖のついたバファローズを立て直せませんでした。私も今の若返りを図るチームには矢野さんが適任だと思います。

    薬は適量使えば生活の助けになりますが、一旦薬漬けになってしまうと負のスパイラルから抜け出すのは容易なことではありません。タイガースは選手を育てていないわけではありませんが、チームの中心となれる野手がいません。鳥谷がバリバリやっていた頃は彼を盾に使うこともできましたが⋯

    チームの中心選手を育てる為にどれだけ我慢ができるのか。上層部もそうですし、ファンもそう。それができなければタイガースはいつまでも薬物依存でズブズブと沈んでいってしまうでしょう。

  8. 京都
    Posted 2018年10月13日 at 13:05 | Permalink

    藤原崇起次期オーナーが、「一番はファンの方が喜んでいただける。そういう形にしたいなとは思います」と新監督の理想像について語った。
    と、報道にありました。
    聞こえは良いですが、偏屈な私は妙に悪い方に勘ぐってしまいます。
    何の為にファンを第一とするのか。
    価値観がどこなのか。
    商売に影響をきたすからファンの顔色を伺い、その都度方向転換する。
    そこには、深い哲学のようなものがないように思えてしまいます。
    結局そんなタイガースを、物心ついた時から応援し、離れられない私が、
    劇薬による「薬物依存症」なのかもしれない。

  9. 虎轍
    Posted 2018年10月13日 at 14:17 | Permalink

    劇薬による薬物依存性は球団フロントとファンかもしれませんね。
    足りないとこを補強するのは当たり前ですからね。
    どっかの球団みたいに獲られると辛いから、ウチで囲い込んどこう。ってなると末期の薬物依存性ですが、それを食い止めて若手を起用したのは金本監督やったかもしれませんね。
    足りないとこを補強する為に糸井を獲ったのは間違ってはいませんからね。
    監督人事は暫くしたら結論は出ると思いますが、誰が監督になろうと、球団フロントがしっかりサポートしてくれるかですね。
    年間指定席の解約が多かったのか、売れ行きが悪いのか、年間指定席の方に限り、年間指定席の購入を紹介をされた方にはボールペンをプレゼントって案内がきましたからね。
    10万も20万もする席を紹介してボールペンって、なんちゅう考え方やねんって思ったのと、どうせ年間指定席を来年も買ってくれるんやから、誰でもええし紹介して。って考えにしか思えませんでした。
    今年から特典も少なくなり、年間指定席も継続するか考えてる時に球団の考え方に関して嫌な気持ちになってます。
    もっと球団はどうしたらファンを増やせるか考え直した方がええと思いますね。
    今日は今季最終戦。秀太が金本監督にお願いして獲得した竹安が先発ですね。
    自分の未来の為に、秀太スカウトの為に、金本監督の餞の為に頑張れ竹安!

  10. 金沢の虎
    Posted 2018年10月13日 at 20:07 | Permalink

    虫歯になった時には二通りの処置の仕方があるんですよね。

    歯医者に行って治療。
    市販の鎮痛剤で誤魔化す。

    歯医者に行けば根本的に治せると、分かっているけど何となく怖いから薬に頼って、健康で全うな状態になる努力をしない。結果、どんどん虫歯は進行し、取り返しのつかないくらいに病状が悪化する。

    阪神球団は、ずっとこの繰り返しなんですよ。結果を出すのに時間はかかったが、野村、星野と言った指揮官を招聘した久万オーナー、野崎球団社長時代だけが少し違ったな。と言うだけで。

    その時に行った改革。チームフロントや球団内部も含めた人心の一新。内部からは色んなしがらみを越えた改革に悲鳴が上がったと聞きますが、その名残はもう無いんですかね…。

    星野監督時代には大量に選手を入れ換えてチーム内の粛清を図りましたが、今それを球団、本社にも行わなくては、とにかくこのチームは何を目指して球団経営を行っているのかもう一度考え直す必要がある。

    相撲界には三年先の稽古をする。
    と言う言葉もあります。昨日今日明日より3年5年10年先のタイガースを描いて欲しい。補強は悪では無いし、時にはするべきとも思いますが、未来を見据えた場合何をすべきか?同じリーグにこれ以上無いお手本がいるんですがね。

    金本監督が堪え性が無い。とは今年よく言われましたが、本当に堪え性が無いのは阪神球団。そしてそれこそが悲しいかな、悪しき伝統なんですよ。だから育てた4番は掛布だけ。なんて言われるんです。

    本当に変革すべきは球団としての考え方、スタンス。もちろん我々ファンも含めて。金本監督の蒔いた種を枯らすも花を咲かすも球団の描く未来によって変わってくるんです。

    次期オーナーがどんな人か、考えの持ち主かは存じませんが、常勝球団にするのか?それともそこそこの順位を行ったり来たりでそこそこ稼げる球団に落ち着かせるのか?どう導くつもりなのだろう?

    我々の願いは勿論1つ。
    くれぐれもせっかく超変革しようとした前監督の想いを忘れないようにお願いしたい。タイガースを愛し、変えようと努力してくれた先人達の想いも忘れず、お願いだから元の木阿弥にだけはならないで…。

  11. 普通の阪神ファン
    Posted 2018年10月13日 at 23:53 | Permalink

    球団、本社が阪神タイガースを、阪神ファンをどのように考えているか? また阪神ファンは阪神タイガースをどうしたいのか?
    監督の人事にせよ、ファンサービスのあり方にせよ、編成にしろ納得できない場合には心を鬼にして甲子園へ行くことを我慢して控えませんか?応援はしたいですが、甲子園で野球観戦もしたいですが、阪神を甘やかすのはもうやめませんか?甲子園でいくら罵声を浴びせても客が入ってしまっては何にも変わらない気がしてきています。

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