遅れてきた「左のエース」実戦配備

両先発の好投で、どうやって1点をもぎ取るかという試合展開。6回ウラ、ヒットで出た近本を、中野が初球きっちり送りバント。そして3番糸原がやや空いていた一塁線を破る二塁打でこじ開けた。インサイド直球、ファウルを打たせてカウントを稼ぐのが目的だったと思われるが、うまくかぶせ打ちすることで相手守備陣のイメージと違う打球を弾き返した。糸原自身のイメージはどうであったか。おそらく右方向へのゴロヒットというイメージは持っていたはずだ。一死二塁であれば、フライナーの当たりでは走者はいいスタートを切れない。いい当たりでもレフトがダイレクトキャッチすれば走者は進めない。コンタクトの瞬間に地面に落ちて右方向へ行く打球なら、二走近本は迷わずスタートを切り、運よく内野の間を抜ければラクラク生還できる。運悪く捕られても二死三塁として、フォークが甘くなる状況を作れる。こうした意図が、インコースのファウルを狙った大野の直球に対して、高度な技術に裏打ちされた糸原の打撃を引き出した。いい仕事だった。

今季未勝利の先発投手が完璧な投球で7回を投げきる。最小得点差で8回へ。たとえ絶好調であったとしても、セットアップとクローザーには重圧がかかったことだろう。走者を二塁に進められたのは、こうした投げにくさもあってのこと。しかし、それでも最終的には危なげなく任務をまっとうできて、今後の精神的な余裕にも繋がったことだろう。
岩崎とスアレスの存在は、現在ライバルにないアドバンテージになっている。

今季2試合目の登板となる髙橋遥人が、7回95球、被安打2、10奪三振、無失点のナイスピッチングを披露し、相手の大エース大野雄大との投げ合いに堂々と勝利した。
投球内容では圧倒しながらも中盤まで味方の援護がない。こんな試合は往々にして不運な1点に泣いたりするのだが、そんな隙すらまったく与えなかった。
初回、ここのところ当たっている先頭の京田への初球、コースとしては真ん中高目の甘い球だった。京田も積極的にスイングしたが、かすかに詰まり、結果は平凡な二ゴロに終わった。この1球にすべてを込めたことが遥人の活路を拓いた。
以後、すべての打者にとって、ストレートがいつ、どこに投げられるのかが「重要問題」になった。初球甘いところに決められれば後悔のタネになり、変化球で追い込まれればクロスファイアにタイミングを合わせないわけにいかず、高目速球に振り負けないためにはおのずと力も入る。まっすぐに対応しようと思えば、スライダーには泳ぎ、腰が引ける。カット、ツーシームという微妙な変化に芯を外す。忘れていたころに遅いカーブも投げてくる。
遥人が遥人であることを証明するピッチング。あの内容であれば、おそらく9回投げきることもできたろう。もちろん自慢のベルトコンベアが万全の状態であり、遥人自身がまだ信頼を得ていない今季だったから、この日は7回までで文句はない。しかし、今後は岩崎、スアレスに頼りたくない日もあるだろう。その時、この日のような内容で投げていれば代える理由などどこにもない。たとえ0-0であっても相手エースより先に降りない投球をさせるにふさわしい。
残り試合があまりにも少ない。だとしても、何ごとも「遅すぎる」ということはない。ここにきて「左のエース」を実戦配備できたことは、現在のタイガースにとって、とんでもなく大きな出来事だった。


週刊虎バカクラブ
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12 コメント

  1. 虎ジジィ
    Posted 2021年9月19日 at 10:41 | Permalink

    今日のコラム「熱い」です。
    コラムが熱い時は、このゲームの重要性がビシビシ伝わります。

    相手が大エース大野雄大という事でタフなゲームが予想され、キラー陽川スタメンも不発も、
    結果的には「これしかない」というタイガースらしいカタチでの勝利でした。

    とにかく高橋遥人の好投に尽きます。
    丁寧に低めへコントロール、球数も少なく、三振も奪える!
    全く相手にスキを与えない素晴らしい投球でした。
    抑えが不安なチームなら完封できたでしょう!いや、後ろにあの二人が居るから飛ばして行けたのかも。

    攻撃は「チャンスに回って来る男」大山になかなか1本が出ず苦しい展開でしたが、好調近本〜中野送り〜糸原タイムリーでもぎ取った1点は貴重な得点になりました。
    目立ちませんが、このところ中野の守備の安定感や正確な送りバントはチームに大きな貢献をしていると思います。

    何はともあれ、このペナントレース最終コーナーへ来て「左腕エース遥人」が帰って来たのはとてつもなく大きな事。

    今日は菅野相手に、とにかく初回からネバネバで球数を稼ぎ降板させ、早めにヘロヘロのリリーフ陣に繋がせたいところ。
    糸原が言っていたように「落とせる試合はない」、踏ん張りどころ!

  2. イアン
    Posted 2021年9月19日 at 10:57 | Permalink

    先日のG-Ysの小川の痺れる1-0試合がありましたが、それを上回る痺れをもたらすグッドゲーム!この時期にこんなゲームが来るなんてもう、これは優勝確率1000%ですわな。

    そもそも高橋はエースですよね。能見がエースだった時のエース。
    西がピリッとしない今季、この人がピシッとして序盤から高橋が左のエースでブイブイ言わしてたらオリンピック前にはマジックついてたんと違うか、、それは来年への夢ですかね~!!

    • Posted 2021年9月19日 at 11:01 | Permalink

      「エースってなんだろう」いつも思います。
      テニスで、相手に触らせないショットをエースっていいますよね。あの頃の能見もそうでしたし、あの頃の井川もそうでした。そう言われると、触らせない球を投げるのがエースっていう気もします。

      • イアン
        Posted 2021年9月20日 at 11:10 | Permalink

        エースの称号ってのはやっぱり特別な意味を持ってますよね。
        特別な意味を持つピッチャー阪神で言えば、村山-江夏-井川だけですね私は。ほんと、”相手に触れさせない”球放るエース。遥人がその域へ行けるかどうかは未知数ですが。というわけで28と29には思い入れありますしね~。

  3. Akira28
    Posted 2021年9月19日 at 11:14 | Permalink

    今朝のtorao様の見事なコラムに、圧倒されました。糸原の意図への視点も素晴らしければ、遥人のピッチングが何故相手打席を封じ込めれるかが良くわかる分析です。
    残り試合が30当たりの第三コーナーを回っての高橋遥人の登場です。
    昨日の試合も、信じます、信じましょう、信じました!を繰り返しながら八回、九回を応援してました。
    信じましたが、痺れた試合でしたね。

  4. こうさん
    Posted 2021年9月19日 at 11:35 | Permalink

    数日前に「いかに最高の形でスアレスに繋げるか」と書いたが…最高やないかい‼️今できる最高を示してくれた。長いこと気持ちよく点を取れないが、昨日は最上の一点。一点だけだからこそチームが全力で守ろうとしていた。トラオさんの文章にあった「帯」が微かに見えた試合だった。

    タイガースが苦手なこと、それは現有戦力が最大の補強だと気付けないことだ。サンズもサトテルも早めにファームで調整させてれば今頃には最大の補強組になっていたはず。二人がいない間には、しっかりとファームの選手にチャンスを与える。そんな自然な流れを当たり前にしていかないと。

    遥人は、それを首脳陣に気付かせてくれたと思いたい。なんてったって大野と投げ合ったんだからさ。

  5. 西田辺
    Posted 2021年9月19日 at 11:44 | Permalink

    「お待たせしました」
    高橋遥人の穏やかな声が聞こえてきそうな、ナイスピッチングでした。
    打者の反応を見ていると、真っ直ぐ・変化球ともシッカリ腕も振れてて
    キレも良かったことは想像に難くありません。
    大野のピッチングも良かった。
    昨日の球審福家は、低めと右の内角に辛いゾーン設定。
    中には回を追うごとに広がる審判もいるんですが、昨日の福家はそこは終始
    変わる事がなかった。
    ピッチャーやキャッチャーの特性で、意地になって放りこんでくる選手も
    いれば、ゾーンと喧嘩しないバッテリーもいます。
    梅野は昨日、全く福家のゾーンと喧嘩せず広く取る方のゾーン中心に
    組み立ててました。
    この辺はバッテリーで意思統一出来ていた感じです。
    やっぱり昨日みたいなピッチングが出来るんですから、高橋遥人には期待して
    しまいますよね。
    春キャンプ途中に脇腹を痛め、ファーム登板までに5か月、一軍登板までに
    7か月を要し、本人もさぞ苦しく焦る日々を過ごしたでしょうね。
    チームは、シーズン最終版の大事な局面に向かってます。
    ここで彼が加わってくれた事は、大きい。
    歓喜の瞬間まで、一緒に戦って欲しいですね。

  6. タクロー
    Posted 2021年9月19日 at 12:49 | Permalink

    圧巻の投手戦

     低めにコントロールされた伸びのある球。空を切るバット。ランナーが出ても動じない。球界の大エースと、待ちこがれた虎の切り札の投げ合いは見応えがありすぎた。白熱の2時間57分のドラマに堪能させてもらった。

     台風をやり過ごした甲子園はメッチャ暑かった。まるで高校野球の真夏に戻ったように太陽が照りつける。こんな時にビールが飲めないなんて♪ いや、マウンド上の熱い戦いは十分酔わせてくれた。
     攻撃陣は糸原に尽きる。チャンスメークの2安打。チャンスで回ってきた3打席目。球界のエースから猛打賞はなかなか容易じゃない。せめて3塁に進めてマルテが何とかしてくれたら、と思っていたら、おっ、ボールが1塁線を破った。3塁側の席からはラインの内か外かよく分からない。近本が余裕でホームに駆けてくる。でかした糸原。どうも3番はしっくりこないと思っていたけど、今は君しかいない、みたい。

     惜しむらくは、相変わらずチャンスで弱すぎる大山。追い込まれても同じスイングやもんなあ、1点どうぞの守りなのに。6回のセンターライナーは良い当たりだったけど、1死3塁で打ってくれ、それだけのこと。
     期待していた7番陽川。空回り。送りバントはしっかり決めなきゃ。あれじゃ今日の出番はなさそうだ。あとは代打の出番が巡ってきて即ツモれるかどうか。輝明が戻ってくるまでに。
     ヒヤリとさせられたのはロハスの守り。ビシエドの打球の鋭さに判断迷い拝みどり。後ろに逸らしたらゲームぶち壊しだった。

     さあ、今夜はガンケルがマウンドに仁王立ちして、すがる相手を蹴落とそう。チャンスで点をとる打撃をしよう。頼むわ、大山。

  7. 虎轍
    Posted 2021年9月19日 at 16:35 | Permalink

    改めて高橋遥人おかえり~!
    シーズン終盤にやっと左腕エースの復帰ですね。
    これからは勝ち続けて、相手に得点をされないエースになろう!
    高橋遥人ありがとう!GJ
    陽川は空回りやったね。せっかくのチャンスを逃すな!
    チャンスをピンチにするな!
    大山!今日は打て!
    糸原!今日も打て!
    全員一丸となって優勝を掴み取ろう!
    今日の相手は壊れかけてるチームやから、トドメを刺してやろう!
    平常心で勝ちにいけ!
    疫病退散!
    頑張ろう日本!

  8. 源氏
    Posted 2021年9月19日 at 18:48 | Permalink

    今2回で7失点
    もったいないからガンケル完投でお願いします
    ああそうだ敗戦処理専門たくさんいるんだ
    なんとか急に大雨降ってもらえませんか

  9. 源氏
    Posted 2021年9月19日 at 18:52 | Permalink

    せっかく解説掛布なのに
    サザエさん見るか

  10. 源氏
    Posted 2021年9月19日 at 21:49 | Permalink

    こんな試合するチームに優勝なんかできるわけない
    今朝のサンデーモーニングで張本に
    今の順位で決まりだね的なこと言わしめたのに
    今朝張本はどんな思いであの発言をしたのか
    今頃大喜びしてるよ
    今年のペナントレースほとんど首位にいて
    最後の最後にひっくり返るよ
    子供の頃勝ったほうが優勝決まりの試合で
    江夏を出さずに上田が打ち込まれて負けた試合が
    一生忘れられないんだよ
    いつもいつも大事な試合は読売に大敗
    今年もそんな思いするなかね

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