プロ野球選手の頂点と底辺

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 日米のプロ野球の制度には違いがたくさんあるけれど、中でも「日本はゆるい」と感じるのが「枠」の問題だ。


 日本の場合、各球団とも支配下選手登録は70人まで(他に育成選手を持つことができる)。70人までの枠に入っていれば「(日本のトップリーグであるNPB所属の)プロ野球選手」だ。28人のベンチ入りを狙う29位の選手でも、クビ候補の70位の選手も同じ「二軍選手」。クビにならない限りは、みな同じ「身分」だ。だからといって、みながのほほんとしているとは言わないが、たとえ一軍の試合に出られなくても、子どもの頃からの夢である「プロ野球選手」になったという事実で満足してしまう人もいるのではないか。
 アメリカの場合、プロ野球選手になることは比較的簡単だ。マイナーリーグ(独立リーグ含む)は240チームほどあるらしい。だから「プロ野球選手」で満足などしていられない。
 まずは各球団ベンチ入り25人枠に入らなければ、MLBの試合に出ることができない(8月まで)。一応、不調などに備えて、15人の予備はOKで40人。この15人は、マイナーで調整をすることになる。とにかくこのメジャー契約40人枠を勝ち取らない限り、一軍の試合に出られない。
 41位以下の選手は、マイナー選手として、人数無制限で契約できる。ただ一口にマイナー契約と言ってもその金額はピンからキリまで。レベルに応じたマイナーリーグに出向させて競わせる。底辺が果てしなく広い上に、頂点がきわめて狭い。日々これ勝負。アップダウンの競争が常に行われる。この切磋琢磨がプレーの質に与える影響も大きいように思う。
 活躍次第で、どこまでも上がりどこまでも下がる。ちょうど相撲の番付に近いイメージか。そういえば相撲も十両になってはじめて関取としての身分が与えられ、脱マイナーが許される仕組みだ。
 さらにはメジャー契約者に与えられる数々の優遇(簡単にはマイナーに落とせない仕組み)や、日の目を見ないマイナー選手を拾い上げる仕組み(雇用している選手は基本的にメジャーに上げなきゃいけない仕組み)が数多あるからこそ可能な厳しいピラミッドなのかも知れない。球団にとっても、現場首脳陣にとっても、選手たちにとっても、常に判断の連続で厳しい制度になっていると思う。
 比較すると、日本プロ野球の甘さが気になる。育成というものの考え方の違いなのかも知れないし、他の社会にも見られるような悪しき横並び主義的な考え方のようにも思う。
 もうちょっと、上げなきゃいけない厳しさと、下げなきゃいけない厳しさがせめぎ合うような、頂点と底辺の制度設計が望ましいと思う。

コメント

  1. 一虎ファン より:

    一握り中の一握りの選手しか在籍できないMLB。そんな世界へ毎年ワンサカ登録できる日本選手はある意味幸運です。
    自動車教習所を卒業したら、試験場で実技試験免除みたいな…。違うか?。

  2. のののー より:

    MLBは「育成」を放棄して大量に飼っているのでは。ルール5ドラフトがあるから、メジャー契約していない選手を伸ばすのは損です。実際、マック鈴木もオヘイダも、来日時には基本すら何一つ身についていなかった。

  3. メル より:

    今日は立川の駅ビル書店にて「虎暮らし」平積み発見。たしか清原と掛布さんの間に置かれてましたよ。
    あ、今日の記事に関係なく、これだけです。(笑)

  4. torao より:

    一虎ファンさん、まあそうですよね。NPBの人材育成能力は定評を得るに至っているということでしょう。
    のののーさん、基本に忠実なプレーヤーも多いので、いちがいにそうは言えないと思いますが、役割分担が日本の感覚とは全然違いますからね。NPBも裾野のことまで考えるべき時だと思います。
    メルさん、売り場レポートはいつでも大歓迎。ほう、立川!素晴らしい。掛布さん新刊出してましたっけ?

  5. 西田辺 より:

    日米でのプロ組織の相違の大きな要因の一つにプロに
    対する意識面での敷居の高さと、リトル・シニアから
    学生野球の技術育成能力の高さがありますね。
    日本の場合、学生野球の認知度がプロのそれを凌駕して
    いた歴史や、プロアマの間に暗く深い溝が横たわって
    いた事実により交わる事なく独自に組織を形成しまって
    ピラミッドにすらならなかった。
    アメリカの様な組織は難しくても、プロアマを統一化
    する組織の形成は必須の課題でしょうね。

  6. G3 より:

     toraoさん、昨年はお世話になりました。来年もよろしくお願いします。ちょっと早いかな(笑)
     日本にもマイナーリーグが出来ればいいなと思ってます。底辺が広くなれば、その分頂点も高くなるでしょうから、トップリーグの活性化にも繋がるんじゃないかと。
     ただ、これも球団によって賛成と反対が別れると思います。マイナーリーグを運営していくのには、それなりの費用が必要でしょうから、それを負担したくない球団は反対でしょう。今だって、選手枠いっぱいの選手を雇わない球団もあるわけですし。
     独立リーグなんかを上手く活用して、何かやれればいいんですけど。

  7. torao より:

    西田辺さん、そのプロアマさえ乗り越えれば、あとは簡単なようにも思えます。
    G3さん、こちらこそありがとうございました。頂点を険しくしないと、綺麗な山の姿にならないんじゃないかと思いました。
    独立リーグ、応援したいです。

  8. THEスタぁ? より:

    更新お疲れ様です。
    自分もプロを頂点とするピラミッド型の育成システムの構築が必要だと思いますね。
    とはいえ、アマの方も高校は高校・大学は大学・社会人は社会人のようなすみわけが出来ているので、アマもモット協力関係を築いて欲しいものですが、プロもしっかりとアマとの関係強化として欲しいですね。

  9. torao より:

    THEスタぁ?さん、二軍(育成選手制度含む)、独立リーグ、トップアマチュア、このゾーンをどうやって制度設計するかがポイントだと思います。そのためには、まず「協会」が必要でしょう。

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