もちろん8回で8-3と5点差あったのだし、今はもう勝ちパターン継投も機能しているので勝利確率は十分高かった。しかし、なにしろあの開幕戦があったのだし、読売打線や狭いドームを考えれば、2イニングで追いつかれることだって想定はしておかなくてはいけない。ましてや7回ウラには浜地がポランコに一発を打たれて8-2から8-3になり、ちょっとだけイヤな思い出がよみがえっていたところ。
とはいえ、あの開幕戦ほどの凶兆は感じていなかった。なにしろその7回ウラは、ポランコの一発以外、ライト輝明のスライディングキャッチ、サード熊谷の三塁線ライナーミラクル横っ飛びキャッチ、センター近本のフェンス激突ジャンピングキャッチと、アグレッシブな守備で相手中軸の攻撃を防いだからだ。高い集中と、攻める姿勢がなければできないプレーをこれだけ連発するチームに、あの悪夢が再来するとは思えなかった。リードがあっても油断してはいけない。痛い思いをしてそれを学んだ。
ただ、逆にこの守備がなければ、この試合はまさにもう一山も二山もあったということ。浜地は命拾い。このラッキーを活かしていこう。
そんなわけだから、8回表に飛び出した山本のダメ押し2ランで10-3となりさすがにホッとした。山本は移籍後初本塁打。打った球や状況は違うが、なんとなくかぶるイメージもあり2005年9月の中村豊の決勝ホームランを思い出させる打球だった。
2-2と均衡した試合が大きく傾いたのは7回表。読売の二番手、ここまで無失点投球を続けてきた今村の予測不能の大乱調がその原因だった。四球で走者を出したものの、ショート坂本の好プレーで代走熊谷が二塁封殺されて二死一塁、残った走者はロハス。打線は下位へと向かうのだから、投手にとって難しい局面ではない。ところが今村は梅野に四球、投手渡邉への代打山本にも四球を出して二死満塁として打順を一番に戻してしまう。
それでも阪神ファンにしてみれば無条件に悪い結果を連想してしまうところだったが、今村はパニック状態に陥ったかのように近本に抜け球連発、4つボールで押し出し。3-2と労せずして勝ち越した。続く中野はカウント3-1となり、逆に難しい打席だったが、ファウルで粘って、8球目を詰まりながらもセンター前にタイムリー。二者を迎え入れ5-2と逆転勝利をぐっと引き寄せる一打となった。
今村は輝明にも四球を出して再び二死満塁としたところで三番手畠に交代。気圧された状況でマウンドに上がった畠も大山に押し出し死球で6-2、糸井は畠の足元を鋭く抜く2点タイムリーで続き、8-2としたのだった。
このビッグイニングと山本のダメ押しのおかげで、その前6回ウラに二番手として投げた渡邉が30歳にしてプロ初勝利をあげた。ソフトバンクを戦力外となって阪神へと移ったが、当初は「ものになればもうけもん」程度の育成契約。そこからチャンスを掴んで今ここにいる。よかったね。おめでとう。
しかしこの渡邉のプロ初勝利も一歩間違えば、阪神移籍後初黒星になっていた。同点の2-2、5回まで2失点となんとか粘ったウィルカーソンに代わって登板。先頭7番香月への代打廣岡にヒットを打たれて無死一塁。
続く大城のバントは投手前ながらそこそこ打球は死んでいたが、渡邉はこれを捕球すると二塁へ送球し封殺した。しかしこのプレー、タイミング的にはセーフに見えた。今の定石ならリプレー検証とするところだが、原監督はリプレーを求めなかった。すでに1回失敗している同点の6回ウラ、まだまだ終盤の重要なプレーがあるかもしれないと考えたのだろう。渡邉はこの1アウトで完全に落ち着き、代打若林、1番吉川を連続三振に斬って取った。いずれにせよあのバント失敗が大きな分かれ目となるプレーだった。
原監督にリプレーを思いとどまらせることとなる「検証失敗」は、やむにやまれぬものだった。6回表、二死走者なしから中野がヒット。相手の警戒をかいくぐり、配球を読み切って二盗成功。このチャンスに輝明がしぶとく左前へタイムリーを打って同点とした直後だった。輝明が好スタートで二盗成功、まさにたたみかけるようなスピード野球。勢いがグッと阪神に傾くようなプレーだった。タイミング的にも明らかなセーフだったが、原監督はここでリプレー検証を「流れを止める戦術」として使った。使わざるを得なかった。
リプレー検証は、確かに「納得」をもたらしてくれるいい制度だ。しかし、プレーの連続性を大きく止めるという作用もある。正規の「タイム」以上にたっぷりと時間を取ることができるし、投手にとってはナインと話をしながら気持ちを整理することができる。原監督は、ここが勝負の潮目と感じたので、あえて権利を1つ捨ててでもリプレーを使ったのだった。ここで使わせたことが、「渡邉の初勝利」へとつながる。
もちろんそれも、過去を受けてのものだ。4回の1点もアグレッシブな塁上の動きからもぎ取ったもの。近本が四球で出ると、打席中野2-2からの6球目にスタート、打球はダイレクト捕球を試みたセカンド吉川のグラブを弾きコロコロ、ギリギリのエンドラン成功で無死一三塁とした。続く輝明の初球、中野がスタートを切ると、意思疎通の乱れもあったか二塁悪送球となり三走近本が生還した。その後、輝明、大山、糸井が三者連続空振三振と打ち取られたため、相手に対して足仕掛けへの警戒心を植え付けた。
阪神のスタート大つまずきはもちろん開幕戦大逆転ショックに端を発するものだが、単純にひっくり返されたことだけでなく、攻撃も守りも萎縮したことが「自己免疫疾患」を引き起こした。こと走塁については、あの日の初回、近本、中野が連続で指されたことが地味にボディブローになった。少々時間がかかったが、そのショックも十分に癒えたのだろう。タイガースのアグレッシブな野球が、モメンタム(勢いでも波でも流れでもいい)を生みつつある。
コメント
昨日は「苦労人の日」だったのでしょうか。
ウィルカーソンはアメリカでの大学時代にトミー・ジョン手術を受けメジャー入りが
叶わず、食品会社の冷蔵庫での過酷な夜間勤務を続けながら、独立リーグでチャンスを
伺いながらメジャー入りした経歴を持つ。
30歳にしてプロ入り初勝利を挙げた渡邉は、BCリーグからソフトバンクに育成入団し、
一度は支配下登録を手にするも、左ひじの故障で手術~回復するも昨年戦力外通告。
ウェスタン時代から注目していた阪神に育成契約で入団し、開幕前に支配下登録。
昨日試合を締めた加治屋も、同じような怪我~戦力外からの阪神への入団経歴を持つ
投手。
同じホークスと言うのも運命の引き合わせか。
古巣相手にダメ押しの2ランを打った山本泰寛も、2020年には巨人の戦力外候補の
一人だった可能性がある。
阪神への移籍は金銭トレードでしたが、選手としては余り名誉な事でないかも知れない。
交換要員が居れば、お互いに必要とされて移籍したと思えるけど、金銭だと金で売り買い
されたというイメージが残ってしまう。
他球団ですが、オリックスの近藤投手が、こちらもトミー・ジョン手術からの復活で
約3年ぶりの白星を挙げたとか。
何かを頑張れば、報われるときがある。
いつもいつも、そんな事は叶わないかも知れないけれど、たまにそんな日があっても
良いですよね。
素晴らしい長文コラムに心が踊ります。
苦労人ナベじぃ30歳での初勝利に感動しました。
オープン戦の時はコントロールもスピードもイマイチで「左のワンポイント」ぐらいに思っていましたが、左打者はもちろん右打者も抑えフィールディングも良く、チームに同じタイプが居なかっただけに とても貴重な存在。
本当に初勝利おめでとうございます。
攻撃陣はシューメーカーに手こずりましたが、得意の足がらめからしっかり追いつき、
防御率ゼロの讀賣自慢の勝ちパ今村自滅を誘い7回に一挙6点のビッグイニング、
更に8回山本のダメ押し恩返しホームランで、勝ちパ投手が肩をつくらずに済む程楽な展開になりました。
しっかり守り、しっかりボールを見極め、足を絡めればそんなに弱いチームではないはず。
今日勝てばまだまだ分からなくなりますよ、西純の先発は楽しみ。
現地観戦でした。先取点を許しいや〜な展開でしたが、なんとか持ち堪えてきたのが勝ちを呼び込んだと思います。今村投手のまさかの乱調に助けられた勝利でした。山本の「恩返し」2ラン、渡辺の苦節○年のプロ初勝利はじ〜んと来るヒーローインタビューでした。ここまで来たら、今日は西純矢に勝ちをつけてのドーム3連勝しかありません。近本の守りだけではないバットでの貢献も見たいです。
山本ー、愛してるぞー。
圧力
緊迫したゲーム決めたのは、ようやく取り戻した走る圧力。難敵から点をもぎ取った。そして、相手の救援投手を飲み込む一丸となった虎の圧力。恐れがよぎった相手にストライクを入らなくさせた。中野の粘った末のタイムリーが勝利を呼び込んだ。オレには四球はいらぬ、前を向くだけだと猛打賞、2盗塁が光る。糸井の追い討ちタイムリーがまた渋い。見事に蘇った。糸井ならヤレる♪と。締まった守りがまたカッコいい。一直線で走っていく近本。連日のファインプレー。負けじ熊谷ナイス横っ飛び。
渡辺に勝ち星。プロ初勝利という。良かった。苦労人の晴れ舞台は涙を誘う。あれは危なかったけど、セカンドの上から女神が微笑んだ。それから忘れてならぬ、ウィルカーソンの安定感。球数要しても大崩れしないのがいいね。山本が何気に良い仕事をしている。選球眼は半端ない。なんとホームランまで打っちまった。彼を迎える喜びあふれるベンチが嬉しい。ロハス、髙山、小幡も乗り遅れるなよ。
torao様の素晴らしい長文に感動。
何とか5回2失点にまとめたウィルク。
何とか5回球数多く投げさせシューメイカーを降ろさせたタイガース。
地味だけどこれも勝利のポイントだったと思う。
6回のリクエスト失敗で裏の大事な所で動けなかった読売ベンチ。
裏目の雰囲気にのまれ自滅した今村と畠。どちらもローテ投手だったのでプロの世界は厳しい。ふとオープン戦ラストの小野を思いだしてしまった。
変な雰囲気は浜地にも伝染してるかの様だった。それを救った3人のスーパープレーはこれから何かが起こる前兆なのかと。岩貞と加治屋で締めたけどなべじぃと山本ヤスはタイガースにとって貴重な戦力と確信した試合だった。今日は西純の読売戦デビューがドキドキの1日になりそう。
梅野、冷静になれ。敵は坂本じゃない。タイガース残留を決めたなら切磋琢磨、チームの為になる競争をしてくれ。下位打順だが、その打席で望まれていることを考えて打席に入ってくれ。「1本出れば」と思っているだろうがチームバッティングになっていない。梅野の覚醒が更にチームを勢い付けるんだからさ。
「走ること、これが俺たちの野球」と急に言い出した矢野さんに複雑な気持ちだが(丁寧な野球、走る野球をしていなかったのにね)、ファームから上がってくる選手の旬を逃さないように。
イチにカケルなら、今日の勝利こそ大事だぞ。連勝していることなんて忘れろ。全力で1勝を取りに行け。
「ストライク入らない病」はウチだけの専売特許と思ってたけど、他所のチームでも目にすることがあるんだと思い知らされた。
これも連勝チームの勢いに気圧されたということか。
連敗中はこれとは逆の向きで気圧されてたんだろうな。
あと気になるのは「守備の人」に徹している近本のバット。
徐々にボールを捕らえはじめてるんだけど、なぜか野手のいない所に飛んでってくれない。
もう一息だ、信じてるよ。
山本はいいね。打撃不調の糸原に代わって先発起用でいいんじゃない。
今日は先発の西純を全力サポートできるよう打線が頑張って、2連休いただけた勝利の方程式トリオにバトンをわたせる展開に持ち込みたい。
こうなったら3タテ返しで今日も勝っちゃえ。
勝ったのに苦言を呈するのは申し訳ないが読売の一死一三塁でバッターはシューメーカー!バントの構えをしているのに梅野のリードは外角ばかり?まるで一点上げるからバントしてください!と言わんばかりのリードに疑問を感じたのですが皆様は如何想いましたか?恥ずかしながらキャッチャー経験者の私には一番バントをやり辛い内角低めの変化球を選ぶと思いますが?
昭和の配球の常識が誤っていたならご指導ください。
まずはなべじいの初勝利おめでとう!
苦労はいっぱいあったでしょうが、プロ野球選手として勲章を手に入れたのは、これからの野球人生をさらに高みを目指せるでしょうね。これからも頑張ってや!
あとは皆様が書いてる以上の事は書けませんので省略します。
今日も勝とう!
疫病退散!
頑張ろう日本!