「かけるゼロ」を消す

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しき【指揮】
《名・ス他》全体の行動の統一のため、命令して人々を動かすこと。さしず。
(『グーグル日本語辞書』より引用)

指揮官が指揮官として機能するために必要なのは信用だ。その指図でいいのか?もっといい選択があるだろう……そんなふうに思われる指揮官では、たとえその指図が合理的であっても実効性が低下する。

当たり前のことだが、簡単ではないのだ。信用を築くには「1+1=2」の繰り返し、それを積み重ねるしかない。しかしコツコツと積み重ねたとしても、「×0」で一瞬にして失われてしまうものでもある。

とくにやっかいなのは、実績のない新任の指揮官の場合、初期値に「×0」が組み込まれていること。まずは、そいつを取り払うことから始めなければならないから大変だ。

どんなに練習で選手と信頼関係を取り付けようが、コーチ陣の一員としてマネジメントのなんたるかを学ぼうが、試合に向けての、そして試合中のディレクションが「勝利を掴むための最善手でなかった」と評価されれば「×0」は削除できない。そればかりか、それに手こずれば、二度と消せなくなってしまう。それが「×0」の怖さだ。

藤川球児監督は、3番輝明・4番森下・5番大山というクリーンナップの並びを決めることで、それぞれに求めることと、打線の中核として求めることを伝えた。それぞれが背負うものは何か。その個性を連ねることで相手とどう対峙するか。それを考えさせ、自覚させた。

藤川球児監督は、饒舌なようで手の内や心の内を見せない。言葉はたくさん出てくるが、その多くは「言わないことの言い訳」のために費やされる。
しかし開幕戦にあたってのディレクションは明確で、意訳すれば「初回、先攻のメリットを生かせ。今季のキーマン・輝明が暴れろ」ということだった。

開幕投手に指名された村上頌樹の投球は圧巻だった。低めの速球は150キロを計時しなくとも、終速が落ちず捕手のミットに収まるまで力強く伸びた。フォークとのコンビネーションに加え、曲がり球も有効に配して、完封ペースで試合終盤へ。

初回輝明の2ラン以降は広島の開幕投手森下も好投を続けた。しかし投手が代わった8回表、二死から大山、前川の連続タイムリーで4-0とリードを拡げた。

選択肢は数多くある中、新指揮官は8回ウラも村上に続投させた。9回に一死一三塁のピンチを招いたが、4番モンテロを詰まらせて二飛に打ち取ったところでマウンドへ向かい、岩崎への交代を告げた。

「完封を狙わせたのに未達で中途半端」とはまったく思わなかった。むしろ、そのときどきで存在する選択肢の中から、短期的、あるいは長期的展望から根拠を持って選んでいったように見えた。

村上の投球数135球は、確かに多い。長いシーズンを考えれば上限だ。しかしモンテロを併殺で打ち取る未来も十分にあったので、「そこまで」には根拠がある。
もしも完投完封でスタートできれば、それは村上にとっては「実質デビュー」だった2023年の快進撃を思い出させる快挙になる。

しかし、「あとひとり」で代えるのも悪くない。未完成だから良いとイチローも言っている。ましてクローザー指名の岩崎にとっては、ひとり取ればセーブというおいしいシチュエーションでもある。

信用のない指揮官が出す命令には力が伴わない。信用を得るには、出した指図が成功となって返ってくる必要がある。

2025の開幕戦は、藤川球児新監督が「×0」を取り去るのに十分な内容だった。

コメント

  1. 虎ジジィ より:

    「‪✕‬0」のお話、深いですね。
    藤川監督はやはり見掛けによらずなかなかのタヌキ?!

    ゲームはほぼプラン通り、最高な開幕戦になりました。

    予想通り両投手共に持ち味を発揮した投手戦でしたが、
    佐藤輝の一発は勿論、3回カープのチャンス(無死2塁)をゼロに抑えたところが大きな分岐点!あそこを抑えた事で流れを相手に渡す事なく終始優位にゲームを組み立てられた感じがします。

    ビハインドという事でカープは継投策に入らざるを得ない状況になり、8回にすかさず「藤川監督バージョンクリーンアップ+前川」が機能し追加点を取ったところで ほぼ勝負あり、あとは「どんなカタチでフィニッシュするか?」だけでしたが、投手出身の藤川監督の判断は「限界まで村上続投」でした。
    もし岡田監督なら「開幕戦というプレッシャー疲れもあるやろ」で8回頭からスパッと替えていたと思いますが、この辺りに采配の個性を感じました。
    正直、どちらが正解かは分かりませんが結果的にカープ打線を完封した上 岩崎にセーブまで付いたので、藤川采配は正解だったと思いたいです。

    カープは打線こそ弱いけど、全力疾走の大山をファーストベースの2mぐらい手前で併殺打にした二遊間守備は鉄壁、
    そして今日は百戦錬磨の床田vs未知数の富田が先発という事で苦戦が予想されますが少ないチャンスをしっかり活かして連勝を希望します。
    ポイントは前川の打撃かな?!彼自身にとっても左腕床田を打てば完全にレギュラーの座を掴むチャンス、頑張れ!

  2. 西田辺 より:

    今年の開幕はtoraoさんの張りのある文で明けることが出来て本当に
    良かった。
    3月8日のコメントにも書かせていただきましたが、今年の村上は
    左足を着地させてからの上半身の切り返しが素晴らしい。
    打者のほとんどは、この切り返しのタイミングの緩急までしか投球の
    強弱や球種を判断できません。
    ここが鋭く切り返せると、すべて同じボールに感じてしまいます。
    ゲーム終盤、7回までかな?8回までかな?と継投のタイミングを
    想像してましたが、まさか9回も村上とは思いませんでした。
    この辺は本人の希望なのか、ボールの質を見ての首脳陣の判断だった
    のかは想像の域を超えませんが、初っ端からすごい手を打ってきました。
    まぁ、今日以降はそこまで先発に無理をさせることはないとは思いますが
    開幕投手を指名した監督と、それを意気に感じた村上自身の合わせ技
    なのかも知れません。
    新打線はいきなり初回、中野の四球から佐藤輝の一撃!
    2025年のプロ野球第1号というおまけつき(阪神としては2018年の
    福留以来)。
    そこから森下・大山・前川と続く打線はかなりエグいと思いますけどね。
    今日の先発は富田。
    オープン戦後半は思うような結果は得られなかったけど、丁寧なピッチング
    で打線の援護を呼び込みたい。
    打撃陣も床田を攻略して、いい形で連勝したいですね。

  3. 虎轍 より:

    まずは球児監督の初勝利おめでとうございます。
    タイガースファンの皆様2025年タイガース初勝利おめでとうございます。
    佐藤輝明は力まずに振ってもホームランになるんやから、力まずにいこう!ありがとう!
    村上の制球は良かったですね。球審吉本のジャッジがもう少し正確なら球数も減ってて完封出来てたと思いますね。ありがとう!
    近本が猛打賞で大山にも打点が付いたので、今日は4番森下が魅せてくれると思いたい(笑)
    今日も最後まで冷静な指揮の球児監督で勝利出来ればええですね。
    ガンバレ!タイガース!
    頑張ろう日本!

  4. とらかっぱ より:

    X0。考えてみればタイガースは若いチームなので、まだまだ自信を積み重ねる時期。村上は昨日のゲームで得るものは大きかったと思います。村上なら完封はいつでも出来る。

    輝明の一発でもう昇天しかけました。今年は皮が3枚くらい剥けてくれそうな気がします。大山、森下も打点あげたし順調そのもの。勢いそのまま富田も勝ってしまおう!

    • 虎轍 より:

      とらかっぱさ~ん。
      森下は打点を記録してませんよ~!
      今日の話になるのか?(笑)

      • とらかっぱ より:

        虎轍さま、本当に昇天していたようです。朦朧ジジィの戯言が今日のHRの予言のようになって、更に昇天しています(笑)

  5. Akira28 より:

    素晴らしい試合でした。
    感動、感謝!
    後は今日は何も言うことありません。
    ところで、torao さんの明文の中の、
    「信認」はおそらく「新任」でしょうか。

  6. より:

    LADとCHCの東京開幕シリーズで世界のKEN WATANABEがLADのユニを着ていることを嘆くポストをしたせいかKEN WATANABEからブロックされた私が来ましたよ(笑。

    トラオさんの名文が読める開幕になって良かったです。

    私というものが無い、と語った球児の采配、とても楽しみにしていました。
    初回輝明2ランで早速「神通力」を見せる素晴らしい滑り出し。
    2-0で迎えた三裏一死三塁打者曾澤での前進守備の意図を知りたかったところちゃんと質問してくれた記者がいてGJ!と思いましたが残念ながら作戦面のことなので教えてくれず。
    相手投手森下から追加点は難しいと考えたか會澤の打力から前進でも問題ないと考えたか。いずれにせよ自分達が相手をどう評価しているかを隠す監督であるということが分かりました。岡田政権との違いが早速浮き彫りに。
    最終回、110球を越えても村上を続投させる辺りも岡田政権では見られなかった運用でしょうか。土日の先発から考えるとそこでブルペンに負担をかけるのは確実である、という読みもあるのかもしれません。
    最後の一人だけ岩崎を投入する決断力は素晴らしい。
    采配で楽しませてくれそうな監督やな、と感じた開幕戦でした。

  7. 掛布にインタビュー より:

    開幕戦を完勝スタート
    村上、一昨年のドーム完全未遂デビューを思い出させる好投。気持ちよく柱となって活躍してくれそう
    テルは監督の襲いかかる発言を体現!
    大山・右京も貴重な打点で早くも新打順効果発揮!
    お酒も進んだ夜でした

    ×0
    新監督、新体制の初戦なのに不安な感じがまるでなかった。展開的にラクだった部分はありますが、チームとしてガッチリと結ばっている。最終回もバタバタした感じなし。
    早くも球児体制は高いレベルにきた、というと言い過ぎでしょうか。
    今日と明日は、若い先発に白星を、を合言葉に束になって戦ってくれると期待します

  8. タクロー より:

    ナイスゲーム!

     金本監督時代以来の久しぶりのマツダスタジアム。開幕セレモニーの和太鼓を超える虎戦士の躍動に鼓動を鳴らし酔いしれた。見事なゲームだった。
     中でも一番感動したのは、8回大山のセンター前タイムリー。思わず涙が出そうになった。立ち上がって拍手、六甲おろし。1塁側とはいえ周りに虎党が結構いる。10人中2、3人。これも2年前の日本一効果なのか。
     輝明の目が覚めるような2ランで先行したものの追加点が取れぬまま終盤。リード2点じゃ安全圏とはいえぬ。先頭近本が粘って2塁打。中野が送って、、と思ったら小フライのバントで近本動けず。輝明、今度はタイムリーを頼む!と願うもあえなく空三振。打ち気満々の森下は見極めて四球。ここで大山。ゲッツーは食らうしいいところがなかった。けれど、凡退に終わったものの初球から打ちに行くなど気迫は見て取れた。さあ大山。簡単に追い込まれるもフルカウントまで持ち込む。渾身のスイング。打球は鉄壁の相手二遊間でもなすすべなくセンター前に。森下も3塁までよく走った。右京のタイムリーを呼び込んでくれた。これで勝利を確信した。輝明の2ランにはじまり、期待以上の投球で応えた村上。そして堂々と最後を締めた岩崎。ナイスゲームだった。
     熱いゲームだったけど寒かったなあ。アツアツのカープうどん全部のせが美味かった。
     さあ富田も村上が敷いた虎道を進もう!中野と木浪もリスタートだ!

  9. 岩修 より:

    昨夜のズムスタ開幕戦。昨年この場所でサヨナラ打浴び涙した村上。
    その夜、坂本捕手との二人夜話を知っていただけにもう感謝感激だった。
    坂本の構えたミットにビタ、ビタっと決まるストレートに酔いしれた。
    一昨日から気になる近本は初回こそ打ち獲られたけどその後3安打。
    元気無い中野だけど初回四球奪取し輝明の先制弾アシストしたのだから合格と思う。
    8回、男気大山と右京の連続タイムリーは森下がしぶとく四球選んだから。
    そしてラスト岩崎の渾身のビタストレートは低かった?嫌々良いんです。魂の一球だから…
    タクローさんも勝って良かった。
    でもヤクルト何してんねん。
    自分もなるべくΧ0にならんように
    気をつけますです。

  10. 星の輝き より:

    163

    昨日阪神打線が相手投手に投げさせた球の数。
    劇的で派手な勝ちをおさめた読売よりは少ないけれど、試合展開と点数差を考えれば両リーグでダントツに多い数字だった。
    納豆とオクラを混ぜて掻き回したような粘り。
    森下なんか根性で喰らい付いてた。

    岡田の次の球児が見えた試合だったと思う。

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